親の期待に応えるのがしんどい……「友達いない=寂しい」の方程式から逃れるには #大学1年生の転び方

トミヤマユキコ

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「キャンパスライフ」という言葉には、なにやら甘美な響きがあります。興味深い授業を受けて、放課後はサークルやバイトに打ち込み、ヒマな時間は友達とごはんを食べたり遊びに行ったり……そんな生活を手に入れることができたら最高ですよね。

しかし、実際のところ、そこまで充実している人っているんでしょうか? まあ、ひとりもいないとは言いませんが、そんなに多くないと思うんですよね。いや、むしろ、少数派なんじゃないかな。

でも、たとえばわたしが美容院に行って、「大学で働いています」と言うと、スタッフさんから「いいなあ、キャンパスライフ!」とか言われるわけです。美容専門学校で技術の習得に専念してきた彼らには、キャンパスライフがとてもキラキラして見える。そのキラキラは単なるイメージですよと言っても、なかなか信じてもらえない。キャンパスライフの魔力、恐るべしです。

今回のお悩みは、ご両親から理想のキャンパスライフを期待される女子学生さんからのものです。いやあ、地味に大変だなこりゃ。とりあえず読んでみてください。

私は部活もやっていないし、バイトもしていないので両親に友達がいるのか心配だよと言われました。大学内で友達はできましたが、学内アルバイトでその日だけ仲良くなってその後友達になるようなことがないので、友達の数は増えません。この前学内アルバイトでLINEを交換した子とも上手く行かなかったので、ますます友達ってそんな増やす必要があるのか疑問に思っています。
両親に何度も自分の気持ちを説明しているのですが、同じようなことを返されるので友達ができない自分に嫌気が差しています。もう両親に友達関係のことで首を突っ込まれたくないです。どうしたらいいでしょうか?
(女性/大学1年生)

友達なんかいなくてもいい!

友達ができないことを心配する両親VSそんなの別によくね?と思っている娘、という構図ですねこれは。お便りによれば、「何度も自分の気持ちを説明している」らしいのですが、それでもまだ言ってくると。ずいぶんと粘りますね親御さんも。

どうしてそこまで友達にこだわるのかは、直接聞いてみないとわかりませんが、わたしの立場から言えることは「大学は勉強するところ」ということです。同世代の若者が集う場所ですから、友達ができることもありますし、それは素晴らしいことだと思いますが、友達を作るために大学に行くわけじゃないんですよ。

勉強して、単位を取って、卒業論文を書く。それが大学でやるべきことです。極端な話、それさえできれば、友達なんていなくてもいいんです。みんな入学前からSNSとかで繋がろうとしすぎ! 孤独を愛する者をわたしは応援したい!
すみません。つい熱くなってしまいましたが、わたしは自分のゼミ生にも「ゼミの同期は友達じゃなくて仲間です」と言っています。仲良しごっこなんかしなくてもいいんですよ、ほんとに(でも仲間は大事にしよう)。

だから、相談者さんがあまり友達を必要としていないことをわたしはすごく好ましく思うんですね。友達って無理して増やすものじゃないし、増えるときは努力なんかしなくても増えちゃうものだし。わたし自身も30歳を過ぎてから友達が増えましたから。

子どもは親の夢を叶えるべきなのか?

ただ、親御さんは大勢の友達とわいわいやってる娘を見て速やかに安心したいんでしょうね。でも、これって、友達が多いことで起こるトラブルとかをまるで勘定に入れてないんですよ。まだ見ぬ娘の友達を無条件に「いいやつ」だと思い込んでいるのが、ちょっとまずいような……。

うーん、だから、やっぱり夢を見ているんでしょうね。娘のキャンパスライフがこうあってほしい、という夢。その夢をどうにかしてかなえてほしいんだと思います。言ってしまえば「親のわがまま」です。

このわがままを聞き入れた場合、相談者さんが望んでもいないのに「親孝行のために友達を増やす」ことになってしまいます。しかも、一度そういうことをやってしまうと、交際相手とか就職先のような「本人の意思を尊重すべきこと」にも親御さんが口を挟んできそうでなんだか怖い……親孝行が行きすぎて、自分の人生をまるっと親に預ける形になると、何かと息苦しいと思いますから、いまのうちに予防できるものはしておきたいですよね。

余計なお世話にはハッピーの押し売りで対抗しよう

まず、今すぐできることとして、「伝え方」を工夫する、というのがあります。

たとえば「友達を増やす必要があるのか疑問です!」とド正論で突っぱねるのと、「友達が少なくても毎日めっちゃ楽しい〜! 幸せ〜!」と言うのとでは、相手の受ける印象が違ってきます(例:北風と太陽)。
なんとなくですが、親御さんが、娘さんの様子を見て「あの子の人生、楽しくなさそうでなんだか心配!」と思っていそうな空気を感じ取ったので、まずはそのイメージを払拭するといいのではないかと。

家族相手に回りくどいと思われるかも知れませんが、ポジティブなバイブスを今までよりちょっと多めに出すようにしてみてはいかがでしょう。「なんか楽しそうだな、よかったよかった」と思って、あまりお節介してこなくなるかもしれません。

ちなみに、この手法を世間に対して使うと、アラサーあたりで「結婚しないの?」と言ってくる人が減り、アラフォーあたりで「子ども産まないの?」と言ってくる人が減ります。ハッピーの圧が強いやつには、口出ししにくい。経験者からのアドバイスです(笑)。

あと、あくまでわたしの場合ですが、親に友達を作れとしつこく言われたら、「嘘も方便」と申しますか、道ばたで猫とすれ違ったことを「友達と会った」って言ったり、バイト先の店長との事務連絡も「友達とのおしゃべり」ってことにしちゃうと思います。人類みな友達。
自分を偽りたくない人にはお勧めできませんが、この程度の情報操作はいいんじゃないかなあ。それで親御さんが安心するなら、むしろ親孝行じゃないかなあ。ダメかなあ。

キャンパスライフを過大評価しがちな全国のみなさん、もしこれを見ていたら、パッとしないけどそれなりに満たされた学生生活もあるんだってことを、心に留めておいてくださいませ。「充実したキャンパスライフ」ってやつは、多くの学生にとって幻のようなものなのですから……。


文・トミヤマユキコ
ライター、大学教員。早稲田大学法学部、同大大学院文学研究科を経て、2019年春から東北芸術工科大学講師。ライターとして、日本の文学、マンガ、フードカルチャーなどについて書く一方、大学では、少女マンガ研究を中心としたサブカルチャー関連講義を担当。
書籍:『大学1年生の歩き方 先輩たちが教える転ばぬ先の12のステップ』(清田隆之との共著)
Twitter : @tomicatomica


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ライター、大学教員。早稲田大学法学部、同大大学院文学研究科を経て、2019年春から東北芸術工科大学講師。ライターとして、日本の文学、マンガ、フードカルチャーなどについて書く一方、大学では、少女マンガ研究を中心としたサブカルチャー関連講義を担当。

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