数学は別の宇宙にも通じる真理! 数学研究のトップランナー・河東泰之先生に数学の魅力を聞いてみた!#学問の面白さ

編集部:ゆう

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河東泰之先生

"Education is a progressive discovery of our own ignorance."
– Will Durant 
(勉強とは自分の無知を徐々に発見していくことである。)
あまり勉強に熱が入らない大学生も多いのではないだろうか。もしそうなら、かなりもったいない。この連載では、勉強する意味を見出せていない諸君に向けて、文系・理系の様々な学問を探求する「知的好奇人」達からのメッセージをお届けする。ちょっとした好奇心が、諸君の人生をさらに豊かにしてくれることを祈って。

今回の"知的好奇人"は?

今回お話を伺ったのは、東京大学大学院 数理科学研究科の教授・河東泰之(かわひがし やすゆき)先生です。

2002年には,40歳未満の優れた数学者に与えられる,日本数学会賞春季賞を受賞するなど、数学研究のトップランナーの一人である河東先生に、数学の魅力を伺いました。

数学は別の宇宙にも通じる真理

――数学という学問の魅力は何でしょうか?

一つは100%自分で納得できる」ことですね。

数学は理屈が全て。基本的には、何か道具を使った実験もなく、昔の文献から情報を探してくる必要もありません。自分の頭一つだけ。

自分の理屈だけで物事の答えを導き出し「分かった!」と納得できます。

また、数学など理系の学問で得られるものは、適応範囲が非常に広いことも魅力です。

物理法則は宇宙全体でも同じはずで、仮に異星人がやって来たとしても、そこは共通の認識として交流できると思います。

我々が実際に経験できる空間や時間はかなり狭いものですが、数学など理系の学問で得られることは、その範囲を超えて通用するものではないでしょうか。

――文化的な背景が違っていても通用するということでしょうか。

そうですね。異星人でなくても、例えば言葉が通じない海外の人にも数式や記号は通じますし、世界中どこでも通じるのは特に数学の魅力だと思います。

また、数学はさまざまな物事と密接に結び付いています。例えば、インターネットは数学の塊であり、検索エンジンを使うときも、クレジットカード番号を打ち込むときも、数学のお世話になっています。

中には意外な形の結び付きもあり、そうした数学とのつながりを研究の中で発見できるのも数学の面白いと思う点です。

――どんな「つながり」が面白いと思われましたか?

私は理論的な数学研究を行いたいと思っていたので、最初のころは物理学には興味がありませんでした。

ただ、理論物理学の研究者と共同研究を行うようになり、そこで私と彼らは全く異なる動機に基づいて研究しているのに、考えていることは非常に似ていることが分かったのです。

これはとても興味深いことでした。

世の中を変える最先端研究にも不可欠

――先生の研究内容について教えてください。

私は「作用素環論」を研究しています。作用素環論は、簡単にいえば「行列が無限に集まったときに、どのような性質が現れるのかを調べる」という研究です。

――行列というのは、高校などで学ぶ数字が縦横に幾つも並んでいるものですね。

そうです。はじめは2×2や3×3の行列だったと思いますが、数字が無限に並んだ行列を「作用素」といいます。

この作用素を足したり掛けたりする枠組みを「作用素環」といい、作用素環論では、作用素環の構成・分類や、現れる性質を調べます。

――この研究からどんなことが分かるのでしょうか?

作用素環論は、多くの数学研究に関係しています。

例えば、20世紀の終わりごろから活発に研究されているもので「ひもの絡まりを数学的に表現する研究(結び目理論)」がありますが、20世紀の終わりごろに、それまでは関係ないと思われていた作用素環論と関係があることが分かりました。このように、別の数学研究とのつながりが明らかになると、研究がより広がります。

また、無限に並ぶ数字の性質を調べる作用素環論は、理論物理学や量子力学の世界でも重要なものです。これらの分野の最先端研究には欠かせません。

――作用素環論の研究は、私たちの生活にどのような影響を与えますか?

身近なところでいえば、コンピューターの発展への影響でしょうか。

近年、量子力学を応用して計算を行う高性能な「量子コンピューター」が注目されていますが、理論部分の基礎付けには作用素環論が関係しています。

――量子コンピューターの発展によって、これまでにない画期的な研究成果が出たり、予想もしなかった発明がされたりするかもしれませんね。研究に終わりはないとは思いますが、先生には「今後こうしたことに取り組みたい」という目標はありますか?

なかなか難しいとは思いますが、無限次元空間での物の働きを数学的に解析して、その中から面白いこと、興味深いことをまとめた「よい作用素環の完全なリスト」を作ってみたいですね。

――そのリストを基に、新しい研究や発見が生まれるかもしれませんね。

海外の研究者との交流で作用素環論の魅力を学ぶ

――そもそも河東先生はなぜ数学に興味を持たれたのでしょうか?

物心ついたころには、すでに算数や数学が好きでした。母親が公文式教室の先生をしていましたし、算数が非常に得意だったので、その影響もあったのでしょう。

小学校のころには、文庫本タイプの入門書を熱心に読んでいましたね。

――作用素環論に興味を持たれたきっかけは?

子供のころに読んだ数学雑誌に、京都大学の荒木不二洋先生(現:京都大学名誉教授)の作用素環論の記事があり、それを面白いと思ったのが最初です。

その影響もあって、数学科の4年生になるときに作用素環論を専門にすることにしたのです。

――実際に研究されてみてどうでしたか?

非常に面白いと感じました。

大学院に入ってすぐにアメリカに留学し、海外の研究者と交流を深めたのですが、そこで作用素環論が思っていた以上に幅広い分野と関わりがあることを学べたのも大きいですね。その結果今に至ります(笑)。

人とのつながりを得ることも大学生活の大事なこと

――大学で学ぶことの意味が見いだせないという学生もいますが、先生は大学で学ぶ意味は何だとお考えですか?

大学で学ぶことには、2つの側面があると私は思っています。

一つは「自分が面白いと思えることを学び、研究できること」です。もう一つは「実用的なことが学べる」ことですね。面白いと思えることがなくても、大学で学ぶことは社会で役立ちます。

特に数学の知識は、現代社会で幅広く生かせるものだと思います。

――「面白いことや興味が持てることがなかなか見つからない」という人は、どうすればいいでしょうか?

大学は先生や学友などいろんな人と出会える場です。そうした人に協力してもらうのはどうでしょうか。先生も真剣に聞かれればそれに応えようとしますし、友人と話し合ってみるのもいいきっかけになります

また、何か行動してみるのもいいと思います。私も学生時代は友人と熱心に勉強会を開いていましたが、そのときの友人の何人もが数学者になり活躍しています。

人とのつながりを得ることも、大学で学ぶことの意義だと思います。

河東先生の考える数学の魅力は、「別の宇宙にも通じる真理」が解明できることでした。確かに別の宇宙から来た人に言語は通じないかもしれませんが、物理法則が一緒ならば数式は伝わるでしょう。そこから言語の理解が進むという可能性もありますよね。そう考えると、数学を学ぶことは「宇宙の真理」を学ぶことといえるかもしれません。

【河東泰之先生 プロフィール】
1962年東京生まれ。東京大学理学部数学科卒業。同大大学院理学系研究科数学専門課程修士課程修了、博士課程進学。現同大大学院数理科学研究科教授。40歳未満の優れた数学者に与えられる日本数学会賞春季賞を2002年に受賞。

(中田ボンベ@dcp)

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