うどんの酸いも甘いも知り尽くす! 香川大学・合谷祥一先生の「うどん学」

編集部:ゆう

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うどん学

香川県の名物といえば、やはり「うどん」ではないでしょうか。うどん県という名前で全国、さらに世界にまでアピールしているのは、皆みなさんもご存じのとおりです。

そんなうどん県にある香川大学では、農学部の合谷祥一教授が統括する「うどん学」という講義が行われています。では、この「うどん学」とはどんな講義なのでしょうか? 合谷先生にお話を伺いました。

うどんの酸いも甘いも全て学ぶうどん学


合谷祥一教授
「うどん学」を統括されている合谷祥一教授

――合谷先生が統括されている「うどん学」とは、どんな講義なのでしょうか?

うどん学は、農学部3・4年生の選択科目として2016年4月に開講しました。全15回の講義で構成されており、その内容は讃岐うどんの歴史や文化、うどんの原料である小麦についてなど多岐にわたります。

――うどんに関する幅広い知識を学ぶことができるのですね。

そうですね。一般的なうどんの知識だけでなく、例えば小麦の品種改良、製粉技術、栄養が偏らないようにするためのうどんの食べ方、製麺工場の見学や、手打ちうどん体験の実習もあります。

講義全体の方向性は私が決めていますが、全ての分野を教えることはできないので、別の先生に依頼したり、専門家を招いたりして、さまざまな分野の講義を実施しています。

――非常に人気のある講義だと伺いましたが、何人くらいの学生が受講していますか?

実習との関係もあり、現在は定員を100名に定めています。ただ、受講希望者はそれ以上集まるので、毎回抽選で決めています。

人気講義
毎回定員以上の受講希望者が集まる人気講義

――希望しても受けられない可能性があるのですか……。講義の中で特に反響が大きかったものは何が挙げられますか?

「うどんのゆで汁の処理問題」ですね。

実はうどんのゆで汁の汚染指数(COD)は、100倍に薄めても池や川の水よりも高いのをご存じでしょうか?

――いえ、知りませんでした! 100倍に薄めても川の水よりも汚いって、相当な汚染度なのですね。

香川県の人々はうどんを多く食べますから、それだけ汚染指数の高い排水を多く流していることになります。これは深刻な問題になっていて、県もさまざまな対策を行っています。

大学の講義は客観性が求められるので、いい部分だけでなく、負の側面も取り上げ、学生たちに問題提起をしています。

――うどんが盛んな地域だからこそ、マイナスの面もしっかりと学び、解決策を考えないといけませんね。

産学官連携の講義の第3弾として誕生

――「うどん学」の講義はどのような経緯で生まれたのでしょうか?

香川大学の農学部では、「地域資源学シリーズ」と銘打って、地域に根ざした産学官連携の講義を行っています。

これまでに「オリーブ学」や「希少糖学」といった地元の地域資源をテーマにした講義を開講し、それらに続く講義として生まれたのが「うどん学」です。

――地域に根差した講義シリーズの一つなのですね。この講義を進めていく中で、どのような点が面白い、興味深いと感じられましたか?

専門家の先生から意外な話が聞けることもあるので、それが面白いですね。先の「ゆで汁の話」はまさにそうです。自分が考えていた以上に深刻な問題であることをあらためて知ることができました。

また、香川県出身でも、うどんを打ったことがない学生が多いのが意外でした。うどんは身近な食材ですが、学生たちもさまざまな新しい発見をしてくれているようです。

うどんを打つ実習

学生自らがうどんを打つ実習も行われる

――反対に、難しいと思われる点は何でしょうか。

教える内容が幅広いことですね。

私一人で教えているわけではないのですが、それでもジャンルが多岐にわたるので、統括する側からすると、どのようにしてまとめるのかを考えるのは簡単ではないですね。受講している学生はもっと大変かもしれませんが(笑)。

うどんは単純ゆえに個性が出やすい興味深い食材

――素朴な疑問なのですが、なぜ香川県でうどんが名物になったのでしょうか?

実は諸説あって明確な答えを出すのが難しいのですが、一つは香川県が昔から良質な小麦ができる地域だったことが挙げられます。

江戸時代に編さんされた類書『和漢三才図会』には、「讃州の丸亀産を上等とする」という記述も残っています。

――おいしいうどんが打ちやすい環境だったのですか。

また、小豆島はしょうゆの産地ですし、塩や煮干し(いりこ)も手に入りやすいことから、うどんに欠かせない「だし」を作るための環境も整っていました。

こうしたうどんが作りやすい理由が重なって、うどんが愛されるようになったと考えられます。

――それが全国に広がり、現在のような人気を獲得したのですね。

そうですね。ちなみに本場讃岐うどんは、次のように定められています。

・香川県内で製造されていること
・加水率は40%以上であること
・加塩率は3%以上であること
・熟成時間は2時間以上であること
・15分以内にゆで上がること

――そうした定義を順守して作っても、店によって個性が出るのが面白いですね。

それがうどんの魅力だと思います。小麦粉に塩水を加えて練って切り、ゆでるだけと作り方は単純。

しかしその単純さゆえに、素材のよしあしや切り方、ゆで方などのちょっとした工夫が味に大きな影響を与えます。作り手の個性が出やすい面白い食材です。

新しいうどん学の誕生を期待

――先生の今後の展望を教えてください。

私はあと1年半ほどで退職になるので、若い先生にうどん学の講義を引き渡す準備をしているところです。

ですので、新しく担当する先生には、ぜひ私とは違った切り口でうどん学の講義をつくっていってもらいたいです。

例えば、私はうどんそのものに関する講義が多かったのですが、今後は「だし」に注目した講義を増やしても面白いですね。

――もしかしたら、合谷先生が予想されていなかったような新しい視点での講義が生まれるかもしれませんね。

うどんは単純だけれど奥深い食材なので、いろんなアイデアを持って取り組んでくれるとうれしいですね。

――ありがとうございました。

うどん学は、うどんの歴史や作り方だけでなく、原料の小麦にまつわる話や、県を挙げて対策しているような深刻な排水処理問題まで、非常に幅広い切り口でうどんについて学べる講義でした。

うどん学の成功例を見て、他の地域の大学でも、地域資源がテーマの産学官連携の講義が増えるかもしれませんね。

(中田ボンベ@dcp)

合谷祥一先生プロフィール

香川大学農学部教授。農学博士。日本食品科学工学会代議員。主に食品物理学を研究。2000年には「日本食品科学工学会奨励賞」を受賞。著書に『進化する食品テクスチャー研究』(エヌ・ティー・エス)など。

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