悩める人への近づき方、正解はあるの? #大学1年生の転び方

編集部:いとり

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自分が大学時代の夏休みに何をやっていたのか、ほとんど思い出せません。サークルやゼミの合宿に行ったことはかろうじて覚えているのですが、それ以外の遊びや勉強の記憶がないんですよ。あ、なんか今、昼寝しすぎて母に怒られた記憶がぼんやりとよみがえってきたので、ずっと寝てたのかも……我ながらひどい夏休みです(泣)。

悩める人への近づき方、正解はあるの? #大学1年生の転び方

その点、夏休みにもかかわらず本連載に投稿してくださるみなさんは本当に偉いと思うんですよ。「転び」「悩み」を通じて、自分としっかり向き合っていらっしゃる方ばかりじゃないですか。
しかもこういうのって忘れようがないんですよ。ディテールは忘れていっても、そのときの感情の手触りみたいなものは、ずっと残るものなので。 

今回のお悩みは、スバっと解決するのが難しい種類のものです。しかし、だからと言って悩むだけ無駄かというと、決してそんなことはない。
自分と向き合っているという意味において、大変すばらしいお悩みだと思います。

同じ高校から進学した友人が、大学生活について苦しんでいるようなのですが、どうしたらいいのかわかりません(悩みがあれば、力になりたいと思っています)。
先日電話があり、講義について尋ねられたのですが、そのとき時の声が泣きそうな声だったので、何かあったのかと心配になっています。ただ、私自身他人にパーソナルなことを相談したこともなく、どう切り出せばいいのかも分からず……。
私と友人は別々の学科で、普段はあまり会うことはありません。そもそも私と彼女は、同郷出身ということでの繋がりが主なのですが、どうしても心配です。
無理に介入するのではなく、あくまで友人として自然な支え方はできないでしょうか?
(女性/大学1年生/19歳)


悩める人への近づき方、どうするのが正解?

お悩みを要約すると、同じ高校から同じ大学に進学した友人がいて、どうも様子がおかしいと。ただ、親友というわけじゃないから、思い切った踏み込み方はできないと。
この距離感。このもどかしさ。とてもお困りなのが伝わってきます。

わたしだったら「なに! あんたどしたの? そんな情けない声出して!」とか言っちゃうんですけど(ガサツなおばさん)、相談者さんはもう少しソフトな方法をご希望のようです。

たとえば、助け船を出すにしても、大型船でダイナミックにやってくるのと、小舟でスーッとやってくるのとでは違うじゃないですか。
わたしは大型船派で、相談者さんは小舟派だと思うんですが、わたしは30歳を過ぎたころから、誰に対しても、大型船で乗りつけることにしています。相手の性格などに合わせて調整していた時期もあるんですけど、スッパリやめました

なぜかというと、よかれと思って小舟で優し〜〜〜く近づいていったら「小舟じゃ頼りない!大型船で来て欲しかった!」と泣かれる、みたいなことってあるんですよ。
相手のニーズを正確に読み取るのはすごく難しいので、事前の調整はほとんど意味がない。ならばとりあえず大型船で乗り付けて様子を見よう(必要に応じて小舟で出直そう)。そう決めました。

相談者さんの場合も、ご友人と同郷・同窓ではあるものの、親友ではないのですから、わからないことも多いですよね。だったらいっそのこと「あの子は赤の他人」ってことにしてしまって、相手の気持ちが読み切れないことを前提にして、小舟でも大型船でも、自分の好きなほうで救助に向かえばいいのだと思います。
どのみち、相手にとって何がベストな選択かはわからないのですから、そこはもう開き直って自分内ベストを選ぶしかない。

そんなわけなので「自然な支え方」にもこだわらなくていいと思うんですね。不自然な支え方だとしても、相手が嫌がるかはわからないので。
「めっちゃ不器用だな……でも優しいな……」って思うかもしれないじゃないですか。むしろあまりスマートだと「上手すぎる……何かの勧誘かな?」って思われちゃう可能性だってあるんですよ。

つまり、どういうことかと言うと、相手の気持ちに配慮するのは限界があるし、正解はあるようでないので、真心を込めた上で、好きなようにやるしかないのです。

相手の反応を見た上で、「あ、違ったな」と思ったら、後から修正をかける。それでいいのだと思います。最初からうまくやろうとせず、調整力を磨いた方が、相手のニーズにフィットすると思われます。

ただそばにいてあげることも大切

そうは言っても、できるだけ自然な感じで友人を助けたいんだ、ということであれば、逆に「自分が相談を持ちかける」のはどうですか?

まずは会って話すことがご友人を救うための第一歩だとすると、会うための方便としては、「あなたが困ってそうなので会いたい」でも「わたしが困ってるので会ってほしい」でもそう変わりませんよね。
「他学部の面白い授業あったら潜りたいから教えて〜」とか「大学の近くでおいしいお店の情報交換したいな〜」とか、その程度の相談なら、相手の負担にもなりません。

動物にたとえるなら、相談者さんのほうが先に「腹を見せる」わけです。それで相手の警戒を解くと。 

初回は、くだらない雑談だけして別れるのでも構いません。相談者さんの直感が正しければ、ご友人はいまとても困っていて、でもそれを素直に話せる状態にないのですから、たった一回の面会で打ち明けてくれるとは思えない。というか、生涯その話には触れないかもしれない。

人には言えない悩みを言えるようになることだけが解決への道ではないと、わたしは考えます。他人には決して解決できない傷をたったひとりで抱えていく人生もリスペクトされるべきです。
でも、ご友人が「この苦しみを誰かに話したいな」と思ったとき、その相手があなただったらいいですね、とは思います。

でも、そうなるためには、かなりの時間を要します。つまり、いまから時間をかけて、くだらないお喋りなんかもいっぱいして、親しい友達になっていくことが必要なんじゃないでしょうか。

厳しいことを言うようですが、そこまで手間をかけるのが面倒くさいと思うなら、不用意に人の悩みに触れようとは思わないことです。中途半端な親切心は、本当に罪深いものなので。

でもですよ? この人、自分が悩んでいることに気づいてなさそうだけど、余計なことをなんにも考えずにお茶ができるのでたのしいな、と思ってもらえるなら、それはそれでステキなことですので、敢えて深い話はしないまま、なんにも知らないフリでご友人と付き合い続けるというのも、ひとつの友情の示し方だとは思います。
ご友人の人生に善良なモブとして参加するのだって、ひとつの「支援」ではあるのですから。

前回、ものすごい愛さんが、たとえ外国語が話せなくたって「コミュニケーションを取りたいと思ってる自分」に自信を持つようにしたらいい」と書いてらっしゃいましたけど、今回も同じですね。
相手の悩みをスマートに解決できるかどうかではなく、まずは、相手の悩みに寄り添いたいと思ったその気持ちを大事にしてほしいです。

とにもかくにも、同郷の友人のために、ここまで心を砕いている相談者さんがいい人であることは間違いありません。優しさはもう十分すぎるほどあるのですから、あとは自分の気持ちに従って行動するだけ。

人間、最終的には度胸がすべて。がんばってください!

文・トミヤマユキコ
ライター、大学教員。早稲田大学法学部、同大大学院文学研究科を経て、2019年春から東北芸術工科大学講師。ライターとして、日本の文学、マンガ、フードカルチャーなどについて書く一方、大学では、少女マンガ研究を中心としたサブカルチャー関連講義を担当。
書籍:『大学1年生の歩き方 先輩たちが教える転ばぬ先の12のステップ』(清田隆之との共著)
Twitter : @tomicatomica


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好きなものはチョコとビールと音楽と映画。ネトフリ廃人。ときどき絵を描きます。
Twitterで人の「いいね!」欄を見て時間をつぶすのが日課。

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