#へんてこアート入門 ゆるい絵がまったり集まった美術展「日本の素朴絵」

編集部:ゆう

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アートと聞くと身構えてしまったり、美術館でも「鑑賞するぞ!」と肩に力が入ってしまうことはありませんか。

でも、リラックスしながらゆっくりと自分のペースで鑑賞したほうが、作品のよさは素直に伝わってくるもの。今回は、のんびり鑑賞するのにぴったりな美術展をご紹介します。

東京日本橋にある『三井記念美術館』では、「日本の素朴絵 ―ゆるい、かわいい、たのしい美術―」と題する特別展を開催しています(9月1日まで)。

古来より日本では、緩やかなタッチでおおらかに描かれた絵を楽しんできました。現代にも歴史に名を残した絵師の作品でなくても、なんともいえない魅力にあふれた、飾り気のない美術品が伝わっています。この特別展ではそのような「素朴絵」を展示しているのです。

今回は三井記念美術館 学芸部長の清水実さんにお話を伺いました。

素朴絵とは?

――今回の特別展のコンセプトを教えてください。

清水学芸部長 日本美術史の王道を飾るのは、絵画にしろ彫刻にしろ、いわゆるファインアート(大衆芸術と区別した純粋芸術のこと)の名品・優品です。ですが、それらとは対極にある、ゆるく味わいのある表現で描かれた作品もたくさん伝わっています。

そのような「ゆるく味わいのある絵画」を、今回の展覧会の監修者である跡見学園女子大学教授の矢島新氏は「日本の素朴絵」と表現されています。

素朴絵

――なるほど。「素朴絵」というのは、矢島教授の表現なのですね。

清水学芸部長 今回は、各地の美術館や博物館、個人コレクターなどから「日本の素朴絵」の範疇に入ると思われる絵画を集め、展示しています。また、絵画だけではなく、彫刻や工芸品などの立体作品まで、少し枠を広げてご紹介しているのも特徴です。

この特別展では「日本の素朴絵」の全貌を紹介し、日本美術史の中に「素朴絵」というジャンルを提唱しようというのが、一つの意図となっているのです。

「たのしい」という要素がいっぱい!

――展示の見どころを教えてください。

清水学芸部長 素朴絵の要素としては、いろいろ考えられますが、サブタイトルにもあげたように、「ゆるい」「かわいい」「たのしい」という、現代のゆるキャラや、世界的にも認知されている「かわいい文化」、そして思わず笑いだすような「たのしい」という要素が見どころであり、面白いポイントになります。

展示の見どころ

――他の展覧会とは「ここが一味違うぞ!」という点は?

清水学芸部長 『芸術新潮』8月号で、世界のゆるかわを集めた「ゆるかわアート万博」が特集されました。本誌では、矢島氏の登場に加え、当館の展覧会に合わせた特集ということで、美術界の注目を集めました。また、世相的にも時流を捉えているという点が、他の展覧会と一味違うところでしょうか。

担当者おすすめの展示は?

――清水さんお気に入りの作品はどれでしょうか? お気に入りのポイントも教えてください。

清水学芸部長 個人的な研究ということを抜きに気に入っているのは、サントリー美術館所蔵の「おようのあま絵巻」です。

おようのあま絵巻

「おようのあま絵巻」二巻 室町時代(16世紀) サントリー美術館

御用(およう)の品を大きな布袋に入れて売り歩く老尼が、草庵の坊主に身の回りの世話をする娘を紹介しようと持ち掛け、坊主はつい依頼してしまいます。吉報を待つうちに、いよいよ娘を迎え入れ一夜を共にするが、翌朝隣に寝ていたのは、おようの尼だったというお話です。

――おもしろいお話ですね。

清水学芸部長 いろいろ当たってみたが、似つかわしい人が見つからず、自分がお仕えしようと考えたというのです。これも前世からの縁があったのだと坊主を口説きますが、坊主はあぜんとして何も言えませんでした。最後は、二人で念仏を唱えるところで、絵巻は終わっています。

坊主の弱気な下心につけ込んだ「おようのあま」のしたたかさは、なんともいえないおかしみがあります。ゆるい描写は漫画のようで、派手な柄の大きな布袋を持ったおようの尼は、まさにゆるカワ系ですが、絵の構図と展開は芝居の舞台を見ているようで素晴らしいですね。

展覧会の楽しみ方

――より企画展を楽しむためのポイントはなんでしょうか? 展覧会に行く前に準備しておけばいいことなどはありますか?

三井記念美術館

清水学芸部長 何も準備しないで、楽しく見るつもりでご来館いただければよいかと思います。強いてあげるとすれば、展示の解説にも、数点「あらすじ」を付けましたが、絵巻や絵本などは物語になっていますので、「あらすじ」を知っていると、より楽しく見られると思います。

――美術館としての今後の展望を聞かせてください。

清水学芸部長 今回の展覧会は、2013年夏の「大妖怪展」、2017年の「地獄絵ワンダーランド」に続く展覧会として意識しています。私の個人的なライフワークとして神仏習合美術※があり、これらの展覧会はそれとも無縁ではありません。美術館の展覧会として、民衆的な仏像・神像の展覧会は、今回の素朴絵ともつながるテーマかと思っています。

――ありがとうございました。

「日本の素朴絵 ―ゆるい、かわいい、たのしい美術―」は夏休みにのんびりと美術鑑賞するのにぴったりな展示です。「ゆるい」「かわいい」「たのしい」、それでいて味わい深い作品を眺めながらまったり過ごしてみるのはいかがでしょうか?

※神仏習合とは、日本の在来の神祇(じんぎ)信仰と外来の仏教とが調和と融合を図り、共存することをいいます。奈良時代に始まり、本地垂迹説(ほんじすいじゃくせつ)をその教説として習合が進みました。そのよう土壌のもとに生まれたのが神仏習合美術です。

【特別展】「日本の素朴絵 ―ゆるい、かわいい、たのしい美術―」
会場:三井記念美術館
会期:2019年7月6日(土)-9月1日(日)
入館料:一般1,300円(1,100円)、大学・高校生800円(700円)、中学生以下無料
※70歳以上(要証明)は1,000円/( )内は20名以上の団体料金
開館時間:10:00~17:00
ナイトミュージアム:会期中毎週金曜日は19:00まで開館
休館日:月曜日
住所:東京都中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階
http://www.mitsui-museum.jp/ex...


(柏ケミカル@dcp)

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