カンニングに誘われた。どうするのが正しかった? #大学1年生の転び方

トミヤマユキコ

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カンニングに誘われた。どうするのが正しかった? #大学1年生の転び方

ようやく梅雨明けしたと思ったら、この暑さ。いち早く夏休みに突入してほしいところですが、そうは問屋が卸しません。7月末〜8月頭は、大学生的には期末試験の季節であり、教員的には採点の季節です。Twitterで「採点の祭典」「採点 地獄」「採点 終わらない」等で検索すると教員の嘆きがたくさん拾えますのでよろしければお試しください(笑)。

わたしの場合、採点をしていて何が一番キツいかって、学生にズルをされることなんですよね。本人なりにがんばってさえいれば、どんなに稚拙な答案だろうと構わないんですが、明らかに手抜きの文章を読まされたり、ネットからコピペしたレポートを読まされたりすれば、ムカつきますし、傷つきます。
というか、「引用」であることを明示しないコピペは「剽窃」なので絶対にやめてくれよな!

自分だって勤勉な学生とは言い難かったはずなのに、いざ自分がズルされる側になってみると、思った以上にダメージがでかい。フザけた答案を読んだ教員は、怒りに任せて「不可だーっ!」とかやっているものだとばかり思っていましたが、実際に採点してみると、怒りよりも悲しみの方がはるかに大きいです。

ものすごい愛さんが前回の原稿で、真面目に勉強することの重要性を説いていらっしゃいましたが、仰る通りで、適当にやる勉強ほど意味のないものはないと、改めて思った次第です。単なるノリで授業をサボったり、一夜づけで適当なレポートを書いていた過去の自分をぶん殴ってやりたいですよ、ほんとにもう!

さて、今回のお悩みは、大学でのズルをめぐるものです。友人からのカンニングの誘いにモヤった経験を持つ大学4年生が送ってくださいました。

仲良くしている友人たちがカンニングをしあう約束をしていて、私もそれに誘われてしまった。私としては、不正行為は言語道断、いくら単位のためとはいえありえないという考えだったので、正直その話には乗りたくなかった。しかし、断るとその友達の中からも浮いてしまうし、嫌な目で見られることが怖くて、その時は、勝手に見るならOKだよという返事をしてしまった。このような時、どう対応すればよかったのか、と、当時はすごく悩んでいた。本当は見せることも嫌だったのに……。
(女性/大学4年生/24歳)


不正は悪である、しかもダサい

カンニングをし合う学生って、実はけっこういるんですよ。わたしはそれを見破るのがわりと得意なので、この方がわたしの授業を取ってなくてよかったなあと思いました(命拾いしたな!)。
カンニングが発覚すれば、呼び出されてめっちゃ叱られますし、共犯がいれば全力で探し出されますし、大学によっては、その年度の単位がすべて取り消しになったりもします。「勝手に見るだけならOKだよ」と言った人も、それがバレれば当然処罰の対象になります。実はかなり危ない橋を渡っていたことに気づいて欲しい……です。

まあ、これが小学生なら、仲間同士協力し合ってのカンニングは微笑ましい想い出になるかも知れませんが、社会人に片脚を突っ込んでいる大学生がカンニングをすれば、「あいつ人としてどうなの!?」ということになりかねないですし、カンニングで叱られた上に留年もするとか単純にダサいので、美学的観点からもオススメしません。

「このようなとき、どう対応すればよかったのか」と書かれていましたが、ひょっとしてカンニングしようとしているうちらはダサいのでは?」と訊いてみたらよかったのでは、というのがわたしの回答です。「正しい/正しくない」という評価軸で考えてしまうと、当然カンニングは正しくないですよね。
「正しくないからやらない」と言ってしまうと、友達から「なんだあいつひとりだけいい子ぶりやがって」と思われてしまうと。

ならば、評価軸を「正しい/正しくない」から「ダサい/ダサくない」にズラして、みんなに再考を促すことができたら、そこまで浮かずに「カンニング友の会」から抜け出せたのではないでしょうか。

人生がダサくなるのはちょっとイヤだな、と思った友人が一緒に足抜けしてくれた可能性だってなくはない。
だいたい、みんなでカンニングし合おうなんて言い出すやつは、それを得意になってやっている節があるので、「ダサい」と言って冷や水を浴びせるくらいが丁度いいんですよ。実際、あらゆる不正の中でも、かなりダサいですからね、カンニングって。

その友情は一生モノじゃないかも

ですが、これはあくまで妥協案です。「浮いてしまう」ことを恐れる方への対症療法でしかありません。本当は悪事を通じて友達と繋がるなんて意味がないですし、「正しさの何が悪い!」と開き直っていいと思います。

その結果、仲間から浮いてしまうのは、とても苦しいことでしょうが、こういう繋がり方をした友達とは、卒業したらどんどん疎遠になっていくものです。一生モノの友情は望めないと思います。だったら、いま浮いても同じじゃないですか。

正しい選択というのは、決断した瞬間は心細くても、やがて大きな自信へと繋がっていきます。周囲に流されなかった自分、おかしいことをおかしいと言えた自分、孤独に耐えた自分……これらは、人生を豊かにする養分です。その養分は、心と体を巡り巡って、自分の魅力の源となるでしょう。そうした魅力に引き寄せられてくる人達と、あらたな友情を育めたら最高ですよね。

この方は、いまのところ「文句を言いながらもみんなについていく」タイプなのかもしれませんが、この先の人生、正しい選択を重ね、自分自身が魅力ある人物になってグループを引っ張る、という道だって十分ありえると思います。正しさを信じる自分を、押さえ付けるんじゃなくて、もっと愛して、伸ばしてあげたらいいんじゃないでしょうか。

孤独への恐怖心はいずれ変化する

「どこかに所属していたい」「誰かに引っ張っていってほしい」という気持ちは、人を臆病にします。わたしだって、自分の所属先では、できるだけ「いい感じ」でいたいと思っています。強い女だと言われることが多いのですが、わたしにだって人並みに顔色をうかがうことくらいあるのです。

でも、不思議なもので、加齢とともに「あなたたちに嫌われても、べつに死ぬわけじゃないし」という気持ちが強くなってきました。それは、わたしが人生の節々で浮くようなことを言ったりやったりしたことで起こった変化です。うっかり浮いてしまったこともあれば、自ら望んで浮いてみたこともありますが、仮に浮いてしまったとしても、どうにかこうにか生きていけることがわかってきました。
また、こちらの組織ではめっちゃ浮いていても、あちらの組織では不思議と浮かない、みたいな経験が少しずつ積み重なって、「無理してまで組織に馴染む必要はない」「自分の居場所はひとつではない」と思えるようにもなってきました。

この方も、きっとそう思える日が来ると思いす。いまはまだ若いので、なかなか勇気が出ないかも知れませんが、大丈夫です。正しいことやダサくないことを選ぶんだ!と思い続けていれば、すぐには思い通りに動けなかったとしても、その思いが、少しずつあなたを強くしてくれます……まるで漢方のようにジワジワと。

文・トミヤマユキコ
ライター、大学教員。早稲田大学法学部、同大大学院文学研究科を経て、2019年春から東北芸術工科大学講師。ライターとして、日本の文学、マンガ、フードカルチャーなどについて書く一方、大学では、少女マンガ研究を中心としたサブカルチャー関連講義を担当。
書籍:『大学1年生の歩き方 先輩たちが教える転ばぬ先の12のステップ』(清田隆之との共著)
Twitter : @tomicatomica


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ライター、大学教員。早稲田大学法学部、同大大学院文学研究科を経て、2019年春から東北芸術工科大学講師。ライターとして、日本の文学、マンガ、フードカルチャーなどについて書く一方、大学では、少女マンガ研究を中心としたサブカルチャー関連講義を担当。

書籍:『大学1年生の歩き方 先輩たちが教える転ばぬ先の12のステップ』(清田隆之との共著)

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