「元カレのせいで大学に通うのがつらい…」キャンパスハラスメントを乗り越えるために #大学1年生の転び方

トミヤマユキコ

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前回、ものすごい愛さんの元に届いたお悩みは、書くことに対するコンプレックスを抱えた学生さんからのものでした。自分を表現することの喜びと苦しみ……いまわたしも文芸学科で教えているので、そりゃあもう痛いほどよくわかります! 

最終的には恥も外聞もかなぐり捨て、「やるっきゃない」精神で書きまくるしかないのですが、その境地に至れる人って、苦しいときに誰かと話をして、頭の中を整理している人が多いような気がするんです。

やはり、相当メンタルが強靭じゃないと、自己内対話って限界があるんでしょうね。ですからわたし自身は、いつ、どんな内容でも、とりあえず話に来てくれ〜と思っています。ただ傍にいて話を聞くのも、教員の仕事かなと。あと、聞いてあげてるフリで、学生さんから興味深い話が聞けて、むしろありがとうみたいなこともあります。

「元カレのせいで大学に通うのがつらい…」キャンパスハラスメントを乗り越えるために

さて、ここ最近の傾向なのですが、学生さんと喋っていると「恋愛はコスパが悪い」と言われることが増えてきました。恋愛は、手間暇をかけたところで必ずしも報われるとは限らないし、それだったら、課金すればするほど見返りが増えるエンターテイメントのほうがいいなと思ってしまうと。

たしに、誰か/何かを好きになる、という喜びは、生身の人間を相手にする恋愛からも、お金を払って楽しむエンタメからも得ることができます。

でも、大学の先生っぽく「生身の人間を相手にする方が尊い」とか言うつもりはありません。だって、そもそも、全ての人が生身の人間を相手に恋愛をする必要があるかどうかは、かなり怪しいじゃないですか。逆上がりができない人や自転車に乗れない人がいるのと同じで、恋愛だって、自分が苦手だと感じるなら苦手なままでいいし、それでも人生は案外スムーズに進んでいくものです。

しかし、そうは言っても、世の大学1年生を見れば、受験勉強から開放された勢いで恋愛にドハマりする人がけっこういるわけです。とくに中高で勉強ひとすじに打ち込んできた人は、恋愛に過剰な期待を寄せたり、実態とはかけ離れた先入観を持っていたりしがち。頭でっかちで独善的な恋愛観は、見ていてハラハラさせられます。

今回のお便りは、まさにそのような恋愛観の被害者となってしまった方からのものです。かなりヘビーですが、まずはご一読ください。

1年生だったころの4月、まだ入学してすぐのことでした。同じ学部の男の子に告白されました。はじめ断っていたのですが、度重なる告白に根気負けしてお付き合いを始めました。
しかし、彼はなかなか癖の強い性格で、自分の気に入らないことがあるとすぐに怒るし、ときには私が暴言や暴力を受けることも。別れようとしても電話やLINEでしつこく連絡してきて、私は大学に行くことさえ嫌になっていました。
その後どうにかお別れをしたものの、学校では彼が私の噂や陰口を流しており、ますます学校に行きたくなくなりました。
2年生になった今、大学には通っていますが、未だに人と関わるのが怖く、学部には友人もいないです。あと2年もこんな学生生活を送ることを考えるとどうしても憂鬱になってしまいます。もう割り切って過ごすしかないのでしょうか。
(女性/大学2年生/20歳)


入学してすぐは、恋愛しないほうがいい

これは本当に気の毒なケースですが、実はよくあるケースです。入学後、早々に恋人を作ったことで、周囲の人間関係から切り離されてしまう(積極的に切り離しを行いふたりだけの世界に引きこもるカップルもいます)。

もちろん、好きな人と作り上げる狭く濃くの人間関係も悪くはありませんが、万が一お別れをして独りに戻ったときには、もう自分の行くところなんてないんじゃないかと感じてしまう危険性がある。本当は、恋愛もしつつ、知人友人との交友関係も保てればよいのですが、そんなに器用な人ばかりではありません。
入学してすぐの恋愛は、相当のコミュニケーション強者でないとうまくやれないと思っておいたほうがよいのです。

しかも、この方の場合、元カレが振られた腹いせに悪い噂を流しているわけです。彼女もそれを知ってしまっているから、シレっとみんなの輪に入っていくことができない。これは相当つらいことです。これまでひとりでよく耐えてきたなと思います。偉いですよ本当に。

ひとりで抱え込まず、専門家に相談を

お便りの最後に「もう割り切って過ごすしかないのでしょうか」と書かれていますが、もし本当に「エイヤ!」っと割り切る元気が残っているようであれば、その元気を使って、しかるべき相談機関を訪れてほしいと思います。

学内にハラスメント関係の相談窓口があるはずです。まずはそこに行って、自分のいま置かれている状況について正直に話してみてください(過去を振り返るのはつらいかも知れませんが、メールのやりとりなど、証拠になりそうなものがあれば、必ず保存してください)。ほぼ間違いなく「キャンパスハラスメント」であると認定されると思います。

そう、これは、単なる痴情のもつれではなく、深刻な人権侵害です。ということは、わたしからの適当な慰めで片付けてよい案件ではない。まあ、言えなくはないですよ?「そんなクセの強い彼なら、周囲の人も彼の流す噂を本気で受け取ってはいないだろうから、気にせず通学したらいいですよ〜」とか。

でも、わたしはそんなことでお茶を濁したくないのです。是非とも専門家のところへ行ってくれと言いたい。
で、相談窓口に行き、話をすることができたら、これまで受けた被害をどう回復するかについての協議が始まるはずです(そういう流れにならなかったら、相談員が無能すぎるので、さっさと学外の相談窓口に行きましょう。たとえばですが、「ウィメンズアクションネットワーク」の「インフォメーション」のコーナーには、カウンセラーや弁護士など、悩みを抱える女性たちに寄り添ってくれる専門家たちのリストがあります。ご参考まで)。

ただ、相談時に気をつけてほしいことがひとつあって、それは「主導権を握るのはあなただ」ということです。相談員が「じゃあ元カレと一度会って話し合いをしましょう!」と言っても、嫌だったらはっきりNOと言いましょう(文面から察するに、強く言われると断れないタイプかなと思ったので一応アドバイスしておきます)。

二度と噂を流さないと書面で約束してほしい、でもいいですし、元カレのことは刺激してほしくないが、自分がお世話になる先生には危険な人物だと知っておいてほしい、でもいいです。
あなたがこの先の学生生活を少しでも心安らかに過ごせる方法を(困ったら大人たちの力を借りつつも)あくまで自分主導で考えて行くことが肝要です——全てを諦めて、そういうもんだと割り切ってしまう前に。

恋人を所有物だと思っている人たち

恋人にさまざまな形で暴力を受け、別れたあとも執拗に攻撃されている事実からわかるのは、元カレが彼女を「所有物」だと思っているということ。所有物が命令をきかないなんてあり得ないから、無理矢理にでも従わせようとするし、どうしても従わないとなれば、暴力も辞さない。元カレが「恋人」と呼んでいるものは「愛しくて大切にしたい人」ではないんですよ、悲しい話ですが。

人生のどこかで、恋愛することは所有することなんだという間違った前提をインストールされている人がいる。厄介ですが、こういうのって、そう珍しくもないんですね。拙著『大学1年生の歩き方』では、共著者の清田さんが、こんな風に書いています。

「偏見上等で言いますが、男の中には『女子に幻想を抱く』と『女子を下に見ている』が同居しています。さらに所有意識があり、その所有権は永続すると思い込んでいます」


……元カレ個人が、というより、この国が、この社会が、そういう男子を生んでいるという側面もある以上、「わたしも悪かったのかな」とか「ひとりでなんとかしなきゃ」とか思う必要はありません。

幸いこの方はこのコーナーにお便りを下さる相談力という名の行動力があるので、その力を使って、残りの学生生活を少しでも明るいものにしてもらえればと思います。

文・トミヤマユキコ
ライター、大学教員。早稲田大学法学部、同大大学院文学研究科を経て、2019年春から東北芸術工科大学講師。ライターとして、日本の文学、マンガ、フードカルチャーなどについて書く一方、大学では、少女マンガ研究を中心としたサブカルチャー関連講義を担当。
書籍:『大学1年生の歩き方 先輩たちが教える転ばぬ先の12のステップ』(清田隆之との共著)
Twitter : @tomicatomica


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