29歳玉森裕太・階段をのぼる。森監督が引き出した俳優の顔。

編集部:かにたま

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累計発行部数150万部を超える東野圭吾の大ベストセラー小説『パラレルワールド・ラブストーリー』。映像化不可能と言われてきた傑作ミステリーである本作が待望の映画化となり、5月31日(金)から公開されます。主人公・崇史を演じるのは、Kis-My-Ft2の玉森裕太さん。今回は「俳優・玉森裕太」について、森監督の視点からみた魅力を伺いました。

INDEX

1.目指したのは“読後感の再現”
2.玉森裕太の俳優としての強み
3.自分を追い込んで嗚咽した芝居
4.役に本人の恋愛観がブレンドされる
5.俳優・玉森とアイドル・玉森の違いとは

目指したのは“読後感の再現”

映像化不可能と言われた原作を手がけるにあたり、森監督が特にこだわったところを教えてください。

監督としてオファーをいただいたのは5〜6年前ですが、僕自身、大学生の頃に原作の文庫の初版を買って喫茶店でパラパラと読み始めたら、ホントに面白くて一気に読みきったという思い出があって、その読後感が強烈でした。

作者にもてあそばれて、混乱させられて、でもどこかで自分が作品に追いついて、カタルシスを得られて…強烈な読書体験でした。あの気分を映画にしたいと思ったので、原作の再現というよりは“読後感の再現”をゴールに設定しました。

映画化が困難な作品だったとは思います。映像としてどういう形に出来上がるかが見えづらいので、最初はなかなか周りの理解を得難くてすごく苦労しました。脚本を作る段階で、どれぐらいイメージしやすいものを作るかっていうさじ加減が特に難しかったです。

「わからないことを面白がらせる」というのが最大のテーマなので、あえて“わからない脚本”を作る必要がありました。骨と皮みたいな状態の脚本に、役者とスタッフが撮影現場で肉付けしていくという作業でした。

森監督が映画作りでいちばん大切にしていることはなんですか?

自分が楽しいことですね。撮り終わるごとに白髪が増えていくんですが(笑)、作っているときは本当に楽しくて。映画を作ることで、自分が何者かを知れるというか。「人生って何かな」ということを、少しだけ知ることができるんです。

作り手としてすでに知っていることを偉そうに上から教えるのではなくて、「こういうことを発見したけれど、どうですか? 僕はすごい楽しかったんですけど、これ面白くないですか? 一緒に楽しみませんか?」と“お客さんと共有する”イメージを大事にしたいなと思っています。

玉森裕太の俳優としての強み

今作は主演・玉森さんにとって俳優としての代表作とも言える作品に仕上がっていると思うのですが、どんな演技指導をされたのでしょうか。

僕はあまり細かい演技の指導はしないんです。ただ“ここにどう存在してもらいたいか”ということは、すごく重要視しています。

玉森くんは今29歳。この作品を通して新しいジャンルに挑戦してもらい、俳優・玉森裕太を生み出すということが、この映画のパワーにもなると思いました。
あとは演技を通して玉森くん自身の資質が全部素直にもれ出てしまう部分と、主人公・崇史という役をどうミックスするかを考えました。

脚本には崇史の人物像、どんなキャラクターなのかということはあえて描いていないんです。“誰が演じるか”が重要だったというか、玉森くんの中にある資質を使わないと血肉のあるキャラクターにならないような脚本にしました。

玉森くんの王子様的なルックスにもかかわらずどこか憂いがある感じは非常に崇史に合うし、玉森くんの中にあるものを引き出して、崇史の表情なのか玉森くんの表情なのかがわからないぐらいにまで持っていけたら、リアリティがある芝居になるだろうなぁと思いながら向き合っていました。

自分を追い込んで嗚咽した芝居

撮影していて印象に残っている玉森さんの演技やシーンはありますか?

恋人の麻由子に「嘘をつくな!」って罵倒して写真立てを壊すシーンです。すごく大事なので後半の日程で撮ったんですけど、もうすでに細かい指導はしなくなっていて、玉森くん自身が役の中に没入したベストな状態のときに撮れました。役にうまく入れているからこそ、玉森くんの感情がすごく昂ぶったんですよね。

崇史は麻由子を罵倒して、傷つけようとする。5テイクぐらいやったんですけど、相当自分を追い込んでたみたいで、OKが出たあとに嗚咽が止まらなくなってしまいました
本来の玉森くん自身は女の人にあんなこと言えないんです。「傷つけたくない」っていう自分の気持ちと、崇史としてやらなきゃいけない気持ちがぶつかっちゃって、すごく苦しい芝居だったと思うんですよね。

カットがかかったときに「なんてことを僕はしてしまったんだ!」と思って嗚咽が止まらなかったんだと、僕は感じました。
でも、それはすごく大事なことで、やっぱり演じているのは玉森裕太というひとりの人間だし、役に玉森くん自身がブレンドされていればいい。いい芝居をしてくれたなと思うし、カット後に涙が止まらなくなったのは、玉森くんの中で覚醒した瞬間だったんじゃないかなと思います。

演技はスイッチを切っちゃえばそこそこ上手にこなせる。でも本当にやりきろうとすると、役を作っていても一旦は心が傷つくんです。
彼はあのシーンを撮ったときにそれを味わったんじゃないかなと思いますし、すごくいいシーンになったと思います。

玉森さんにとっても、今回の現場は初めての経験が多かったのではないでしょうか。

もちろん、これまでもやるべきことはやってきたと思いますけど、こういったスタイルを求められるのは新鮮だったと思います。

やっぱり初めてのことって火がつくと思うんです。怖さも不安もあるけど、「よし、行くぞ!」みたいな気持ちになって、いい表現に結びついていく。だから僕が彼を追い込んだのも最初だけで。
「迷ってもいいし失敗してもいいけど、勇気と覚悟が必要」とわかってくれてからは、玉森くんは自分で自分を追い込み出したんです。

そこからの玉森くんはやっぱりプロでした。現場でカットがかかってからも、ずっと崇史でいようとし続けるんです。

撮影の前に「主演として覚悟を決めろ」って僕が言ったんですが、玉森くんが自分なりに実践してくれた形だったんじゃないかなと思います。
期待に応えてくれたし、期待以上の主演俳優になってくれました

役に本人の恋愛観がブレンドされる

玉森さんは、麻由子役の吉岡里帆さん、智彦役の染谷将太さんとのシーンが多いですが、意識して演じてもらったことはありますか?

どの時点で誰が誰をどのぐらい好きかとか、自分の思いがどこにあるのかみたいなことは、あえて台本として共有してないです。全部役者にまかせています。

この時点で崇史が麻由子をどれぐらい好きだったかとか、麻由子が自分をどう思っているかは、玉森くんが思ったとおりに演じています。
演者がどう役を解釈したのか、スタッフも知らないし、僕も知らないんです。だからその都度「こうかな?」と感じたり、予測したりしながら撮っている。その時々の感情は全部役者に委ねています

作品の面白さを保つために、「今、誰が誰をどう思っているんだろう」っていうことを観る人にとってもあいまいにしたかったんです。そもそも恋愛ってあいまいだったりするじゃないですか。どっちも好きっていう気持ちもあるし、簡単には順番がつけられなくて、好きか好きじゃないかって難しい。

撮りながら思ったのは、「(玉森くんが演じる)崇史は、そんなにも(染谷将太さんが演じる、親友役の)智彦のことが好きなんだ」ってこと。「ラブラブじゃん」って(笑)。
あと、玉森くんは(吉岡さんが演じる、恋人役の)麻由子が「自分のことを好きじゃない」と思って演じてたみたいなんですよね。

僕はわりと「崇史は傲慢な男だから、ある時点からきっと麻由子の感情は智彦から離れて自分に矢印がきてるっていう認識がある」と思ってたんです。
ところが、途中で1回だけ玉森くんに「この時点で麻由子って、もう崇史を好きだよね?」って言ったら、「いや、そんなわけないです」って言われちゃって、全然僕と認識が違いました。

崇史は最終的に、どういうキャラクターに仕上がったのでしょうか。

本当は自信がない人なんです。表面的にはものすごく自信家に見えるんだけど、根っこでは自信がない人…崇史という人物像は、玉森くんが演じることでそういう人になりました
意外でしたが、玉森くんならではの恋愛観がうまくブレンドされていて、「なるほど!」ってこっちが発見させられたぐらいです。「だから玉森くんはモテるんだろうな」って思いました(笑)。

僕も便乗して、自分の演出の方向に沿わせるんじゃなくて、その時点で玉森くんがそう思っているのならそういう物語にしていこう、って思いました。骨と皮だけだった台本を、役者たち自身の恋愛観や資質が肉付けしていったんです。

全部のあいまいさも含めて“パラレルワールド”というか。記憶とか恋愛とか、自分とは何者かみたいなことのあいまいさがテーマだと思っていたので、いろんなことを野暮に語らず、映画を観た人の鏡になるような映画になればいいなという思いはありました。

俳優・玉森とアイドル・玉森の違いとは

この作品を通して森監督が見出した、玉森さんの俳優としての顔とは?

エネルギッシュでアクティブな雰囲気の俳優っていっぱいいると思うんですけど、玉森くんは “受け身”の雰囲気がすごく色っぽい。映画に臨む玉森くんの姿勢を見ていると、どんな要求をしても、全部やる、なんでもやるっていう姿勢なので演出家冥利につきますね。
あと、ただ立っているだけでほっとけない感じがあって、人を引き込んでいく力がすごくあります

アイドルとしての彼とも仕事をしたことがありますが、そのときは7人でグループという感じで、それぞれ役割分担があったんです。だから、今回の撮影で会った時は全然違う人物と会った気がしました。

ただ、アイドルとしての玉森くんだからこそ染谷くんと拮抗できたと思っていて、やっぱり東京ドームに立ってセンターの自覚を持ってグループを牽引してきた中で鍛え上げられたものってあると思います。

文:落合由希
写真:広ミノル

【映画】『パラレルワールド・ラブストーリー』

©2019「パラレルワールド・ラブストーリー」製作委員会©東野圭吾/講談社
5月31日(金)全国ロードショー
松竹



【STORY】ある日突然、崇史(玉森裕太)が迷い込んでしまった2つの世界。1つの世界は、愛する麻由子(吉岡里帆)と自分が恋人同士。しかし、もう1つの世界では麻由子が親友の智彦(染谷将太)の恋人に・・・。混乱する崇史の前に現れる、2つの世界をつなぐ【謎】の暗号。目が覚めるたびに変わる世界で、真実にたどり着けるのか?

出演:玉森裕太 吉岡里帆 染谷将太 筒井道隆 美村里江 清水尋也 水間ロン 石田ニコル / 田口トモロヲ
原作:東野圭吾「パラレルワールド・ラブストーリー」(講談社文庫)
監督:森義隆
脚本:一雫ライオン
音楽:安川午朗
主題歌:「嫉妬されるべき人生」宇多田ヒカル(Epic Records Japan)

公式サイト:http://www.parallelworld-lovestory.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/paralove_movie

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