喫煙所は歴史的建造物? 視点がトガりまくりなフリーペーパー『大学喫煙所名鑑』誕生秘話

稲田ズイキ

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喫煙所とは、なんとも不思議なスペースだ。

見ず知らずの男女が「タバコを吸う」その目的一つで一区画に集結する。
喫煙者からすればオアシスであり、タバコを吸わない者からすれば不健康の象徴のような場所。

そんな喫煙所に光を当てた異色のフリーペーパーが存在する。

『大学喫煙所名鑑』だ。

北は北海道、西は京都まで、総計20の国公立大学の喫煙所を調査する本誌。

学生フリーペーパーの祭典「Student Freepaper Forum 2017」で入賞。
フリーペーパーの専門書店「ONLY FREE PAPER」からは「久しぶりに脳みそ揺らされた」と称賛の声が。


フリーペーパーの中でも異色の雰囲気を放つ本誌は、どのようにして生まれたのか?

クリエイティブディレクターの「ギャル」と名乗る学生に話を聞いた。

<INDEX>
1.喫煙所は消えゆく歴史的建造物
2.フリーペーパーの「フリー」は「自由」だと思っていた
3.紙は遊び心を注ぎ込みやすい
4.もっと自由でいい。だって学生なのだから。

喫煙所は消えゆく歴史的建造物

ーまずびっくりしたのですが、見た目は全然ギャルじゃないんですね。

ギャルが好きなので、「ギャル」と名乗っています。

ーなぜ喫煙所に目を向けたのでしょうか?

『大学喫煙所名鑑』では、1.設備2.アクセス3.オリジナリティ4.非隔離度5.景観 の5つの項目で喫煙所を評価する

まず「喫煙所」って響きが悪くていいんですよね。社会的にマイナスと捉えられがちなものだからこそ、扱ったらおもしろいんじゃないかと思いました。

ーたしかに、喫煙所に注目すること自体が人類初だと思います。中でも、なぜ大学の喫煙所に?

大学生を見るのが好きなんですよ。
自分も今学生なんですが、他の大学生のことってあんまり知らないじゃないですか?
僕ら以外の大学生がどんな感じで生きているのか気になったので、大学の喫煙所に行きました。

ーたしかに大学というのは閉鎖的な場所でもありますよね。その中でも国公立大学に着目したのはどうしてなのでしょう?

20の国公立大学の喫煙所を、イラストで紹介する

地方大学って、大学周辺に何もないからこそ、コミュニティが完結している良さがあるんです。
例えば、大学内に卓球台があったり、地元のじいさんばあさんが普通に食堂にいたり。

ーたしかに、地方大学は少し特殊かもしれませんね。

大学内で遊ぶ場所が完結しているのは、都会にはない文化だなと思って。
それで、地方国公立大学が「泥臭くていい」と思ったんです。

最近は、禁煙・嫌煙ブームってこともあって、喫煙所は消えゆく歴史的建造物です。だから、このフリーペーパーは国立図書館とかに置けるんじゃないかとも思っています。

フリーペーパーの「フリー」は「自由」だと思っていた

ーフリーペーパーを作ろうと思ったきっかけは?

2000時間ゲームするくらい大学生活が暇だったので、なんでもいいからなにか作りたくなったんです。
フリーペーパーを意識したのは、「SFF2016」の全国大会を見に行ってからですね。

ー学生フリーペーパーの祭典ですよね。見に行かれてどのように思われました?

正直、全然おもしろくないって思いました。
謎の上から目線なんですけど、見た瞬間に「絶対超えられるな」と思ったのがきっかけですね。

ー根拠のある自信なのか、根拠のない自信なのか……(笑)

僕、根本的に勘違いしていて、フリーペーパーの「フリー」って「自由」の意味だと思ってたんですよ。これ、ちょっと天才っぽくないですか?

ー「フリー」は「無料」の意味ですよね。その間違い方、大物感があります(笑)

僕は、本気でそう勘違いしていたんです。
ファッションやら、学生生活やら、もう掘りつくされたジャンルを扱っても、つまらないじゃないですか。その冊子でしか読めないこととか、自分が気になるものを作ったほうが偏愛できると思ったんですよね。

コンテンツの業界では「ものを違う角度から見る」みたいな意味で「切り口」という言葉を使いがちなんですが、「いや、そもそも扱うもの自体も違う角度で考えろよ」って思ったんです。

ーだから、学生フリーペーパーでやり尽されたネタではなく、誰も目をつけていない喫煙所に目を向けたのですね。

読者に無理やり共感させるようなコンテンツって、つまんないじゃないですか?
僕は「わからないということがわかった」っていう思想が大事だと思うんですよ。
だから、もし「この冊子のどこがいいかわかんねぇ」みたいな人がいたとしてもいいんです。
そんな熱量がこもったものを、学生フリーペーパーの祭典に突き刺してやろうと思いました。

紙は遊び心を注ぎ込みやすい

ー『大学喫煙所名鑑』は喫煙所の紹介ページ以外に、遊び心があるページが見受けられますね。

広告を模したページ。QRコードを読み取ると「never give up」と書かれたツイートにたどり着く。

広告ページとか、全部嘘ですしね。

Webに比べて、紙の方が変なことを書いたときに映えると思うんですよ。
Webだと流れてしまって、小ボケみたいになるんですが、紙は残るので「恥ずかしいことをなんで堂々と続けているの?」っていうおもしろさには繋がりますよね。

ー随所に挿入されている写真ページはどういった意図があるのでしょう?

写真が大きく掲載されているページ。「話をパン教授に戻すと……」や「今日モス。」など、一見では理解できないコピーが添えられている

写真に関しては、「屋上」と「パン」、「洗濯機」と「ゲーム機」のように、なるべく遠いものを掛け合わせた写真にしたいと思って、撮りました。

コピーに関しては、作った僕らもよくわかってないです。何にするか何回も話し合っていたんですが、なんとなく「朝なんか食べた?」って言ったら、「今日モス。」って返ってきたので、「じゃあそれでよくね?」ってなりまして。

ーなにを考えて作っているんだろうと思えば思うほど、ドツボにはまっていくおもしろさがあります。

もっと自由でいい。だって学生なのだから。

ー「ギャル」と名乗られているのが気になったのですが、なぜ匿名で行われているんでしょうか?

僕が第三者としてこの冊子を見て、作っている人が匿名だった時のほうが熱いからです。
「よくわからんやつが匿名で暴れてるぞ」っていうほうがおもしろいじゃないですか? 匿名の美学というか。

ー表紙に記載されている会社の名前は?

「株式会社ハクエン」は存在しない会社ですね。架空の会社を立ててみたかっただけです。

ーどこまで真剣なのか、ふざけているのかわからないです……

結局のところ、自分たちが欲しいと思うものを作っているだけなんです。
これを作ったメンバー5人は絶対にこれ欲しいんですよ。

だって、まだ学生なんだし、クライアントとかいないわけじゃないですか?
いないからこそ、「なにやっても怒られないぜ?」くらいの感じで、自由にやるのが学生の良さだと思っていて。

ー冊子の最後の一文を思い出しました。
「すばらしいモノは、すぐ近くにたくさん転がっているはずだ。ダメなことをしよう。たくさんしよう。まだ我々は学生なのだから。」と書かれてありましたね。

学生フリーペーパーの祭典「SFF2017」に出場した時、自分たちの作品を言い表すコピーを出さないといけなかったんですよ。
悩んで出したのは「そう、これは魂の一撃。」でした。
結果、ちょっと滑ったんですけど(笑)

ーしかし、まさに有言実行で、入賞されていましたね。

うれしいですけど、正直、絶対取れると思ってました。
自分の欲しいもの、自分がおもしろいものをつくっているという自信がありましたから。

そうやって、学生のうちは、伏線を張り巡らせるだけ張り巡らせて、全部爆発させるくらいでいいじゃんって思うんです。

プロフィール:『大学喫煙所名鑑』編集部
架空の会社「株式会社ハクエン」を名乗りフリーペーパー『大学喫煙所名鑑』を発行した学生集団。全国各地の大学の「喫煙所」にフォーカスした独自の視点が話題となった。
https://twitter.com/fp_hakuen

ライター:稲田ズイキ
僧侶。1992年生。デジタルエージェンシーから独立後、ネットとリアルで煩悩タップリな企画をするフリーランスの編集者/ライターをしています。10月から「フリースタイルな僧侶たち」のWeb編集長を務めます。
https://twitter.com/andymizuki

撮影:『マイナビ学生の窓口』編集部


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