田中さんの「ガクチカ（学生時代一番力を入れたこと）」は？

▲海外旅行を楽しむ学生時代の田中さん

学生時代にいちばん頑張ったのは、修士論文のための研究活動です。専門は分子生物学。皮膚の表皮細胞が角質化していくプロセスに関わる遺伝子にフォーカスし、その遺伝子によって細胞にどんな形態変化が起きるのかを研究していました。それはちょうど現在の仕事で、遺伝子のタンパク質を指標に化粧品の機能を評価する取り組みに応用できるものでした。

実験には時間をかけて行わなければいけない過程もあったので、夜遅くまで研究室に残ったり、場合によっては泊まったり、休日も研究室に出て没頭していました。間違いなくこれまでの人生で一番長く研究室にいましたし、大変だった時期もありました。しかし同期の仲間たちと共に頑張り、切磋琢磨できたことはいい思い出です。小さな結果を1つ1つ積み重ねて大きな目標に向かっていった体験は、今も自分の力になっています。

仕事で役立っている大学時代の経験は？

「大学の卒業記念にしよう」と友達に誘われて、ハーフマラソン大会に出たことですね。僕はスポーツが好きですが走ることは苦手だったので、最初は「2kmも走るなんてとても無理だ」と思いました。でも出場するからには完走したい。そこで大会の1、2カ月前から近所の電柱を折り返しポイントにして走り始め、少しずつ本数を増やすことで距離を伸ばしていったんです。コツコツやった結果、気が付いたら長く走れるようになっていました。そして本番では、一緒に走った仲間の中で何と僕が一番にゴールしたんです。友達もみんなビックリしていました。

この体験は、年単位のスパンで取り組む研究の仕事に似た部分があります。ゴールを見据えることは必要ですが、そこに到達するまでの距離が遠いと、前進している実感が得られずに苦しくなってしまう。そのため、まずは小さな目標を立てて「これを達成すれば階段を一段上れる」と目の前のことに注力することが大事です。そのように1つ1つ小さな目標をクリアしていくと、気付かないうちに距離が縮まっていたりするんです。大学時代のハーフマラソンも、最後は「自分でもこんなに走れるんだ」という驚きがありました。小さな成功体験を重ねることで自信もついてくるし、その達成感は次のチャレンジに繋がることを実感しました。それは今の仕事への姿勢に通じていると思います。

就活前にやっておいたほうがいいことは？

学生時代は何か新しいことに挑戦したり、体験してみたりすることが大切だと思います。僕は研究室に入る前、大学を通して続けていた塾講師のバイトのほかにも「面白そうだな」と興味を持ったアルバイトをいろいろとやっていました。たとえば結婚式場のウェイターをしたときは、お客さまの前ではクールなのにバックヤードは戦場のようで、そのギャップに驚きましたね。コンサートの設営のバイトをしたときも、華やかなステージの裏方が見られて面白かったです。

海外旅行にも積極的に行くといいですね。僕がヨーロッパの国を回ったときは、鉄道に定休日のある国があったり、公衆トイレが有料だったりなど、日本で当たり前と思っていることが当たり前じゃなくてとても面白かったです。漠然と生きていると案外見落としがちなことが多いのですが、今までと違う体験をしてみると、常識だと思っていたことにも疑問が湧いてきたりします。そんな素朴な疑問が、将来自分のやりたいことや、就きたい仕事に繋がっていくこともあると思います。

「私たちが会社の経営課題を解決していくことが、お客さまにもっといいものを提供することに繋がる仕事がしたい。肌の探求から得たことを常に形にして発信していけるような研究者になりたいですね」と田中さん。新たに始まった取り組みが、将来どんな商品として実を結ぶのか。田中さんの活躍から目が離せません。

文・鈴木恵美子
写真：ブリッジ
取材協力：株式会社ちふれ化粧品