あきっつさんの「ガクチカ（学生時代一番力を入れたこと）」は？

ひとつは学習塾のバイトです。大学1年生から4年生の3月までほぼ4年間続けて、最後はバイトリーダーも務めました。そこは個別指導の塾で、集団になかなか馴染めず、大人数の勉強についていけない子が多く来ていました。ですから生徒一人ひとりの個性が強く、「この子はどう声掛けしたらやる気が出るかな」と常にいろいろ考えて、講師の仲間ともずいぶん話し合いました。

たとえば、甘えん坊男子には「いいよ、もう頑張らなくて」とわざと突き放すと逆に火がついてくれたり、本当は勉強が嫌いじゃないけど、学校の先生とそりが合わない子には「先生を見返せるよ」と持って行くと、いきなり90点取ってきたりしました。勉強を教えるだけでなく、子どもたちのモチベーションを上げる工夫をすることがとてもおもしろかったです。その結果、成績の悪かった子の点が上がったときは「よし！」という感じでしたね。

また、全国各地の議員事務所や大使館でのインターンシップを運営するNPO法人「ドットジェイピー」でスタッフを2年半やっていました。私はもともとエンタメも知りたければ、ニュースや政治もなんでも知りたいというミーハーな性格なので、そんな場に関われば、何かしら世界が広がるかもしれないと思って参加したんです。大阪の市議会議員の方とよくご一緒したんですが、地道に地元を回って泥臭く活動されていることがよくわかりました。知らなかった世界を自分の目で見られたことはおもしろかったし、とても勉強になりましたね。

仕事で役立っている大学時代の経験は？

やはり学習塾で子どもたちへの声かけの仕方を試行錯誤したことです。商品企画とは会社のさまざまな部署のいわば真ん中にあるポジションで、新しい商品を一から形にしていくためには、周りの人たちに一緒に頑張ってもらわなければいけません。「目の前にいるこの人にどう伝えたら、一緒に走ってくれるだろうか」と伝え方を考えるとき、子どもたちのモチベーションアップのために工夫した経験がとても役に立っていると思います。

また、NPOスタッフなどの経験で見聞を広げられたのもよかったですね。よく若い人の間で「目上の人と何を話したらいいかわからない」という話も聞きますが、私は芸能関係から時事の話題までなんでも好き。ですから、会社の中でも外でも年代の違う人とのコミュニケーションに困ることはあまりありません。大学時代からさらに磨きをかけたミーハーな性質が、こういうところで役に立っているようです。

就活前にやっておいたほうがいいことは？

自分がやりたいことをするのをおすすめします。私は海外留学が気になっていたのに、結局行かないで終わってしまいました。今でも数日の海外旅行には行けますが、社会人に2ヶ月間の留学は厳しいことも。だからやっぱり「学び」で海外に行ってみたかったな、と今更ながらに思っています。気になったことはどんどん実行した方が、絶対に後で後悔することは少ない気がします。

現在は右肩上がりの時代ですが、私たちの頃は就職氷河期の真ん中でした。学生は不安を抱えて、どうしたら内定を取れるかということばかり考えていた気がします。私はそんな空気にちょっとモヤモヤを感じていて、自分の将来はちゃんと考えたいけど、周りに流されないように頑張ろうと思っていました。

これから就活に向かう学生には、些末なことにこだわりすぎず、自分の考えを持ってやりたいことに思い切って挑戦してほしいと思います。

今のものづくりの仕事は本当に楽しいとあきっつさん。「同じひとつの商品でも、切り口を変えて提案したらもっとおもしろくなるかもしれないと考えているので、今後は新しいメッセージを発信するPRの仕事もしてみたいですね」と語ります。高感度なアンテナと人を動かす発信力を生かして、どんなチャレンジをするのでしょうか。将来がとても楽しみです。

文：鈴木恵美子
写真：中邨誠
取材協力：ロート製薬株式会社