西橋さんの「ガクチカ（学生時代一番力を入れたこと）」は

▲学生時代の西橋さん

家庭教師を各家庭に売り込むという営業職のアルバイトをしていました。以前家庭教師のアルバイトをやっていたこともあり、営業職のアルバイトはなかなか学生ではできないおもしろい経験ができそうだな、と軽い気持ちで始めました。ところが、甘い考えでした。 

仕事としては、アルバイト先の会社へ問い合わせをしてきたお宅に１人で伺い、体験授業をして家庭教師を斡旋するという内容です。平日は大学の授業を終えてから1件、休日は多い日で3件ほど、神奈川や埼玉まで電車と徒歩で行けるところはどこへでも出向いていました。会社からはその日に契約するノルマが求められるなど、アルバイトとは言えかなり厳しい環境だったこともあり、私が始めたときに8人いた先輩が、半年もたたないうちに7人辞めていました。逆にそんな環境だからこそ辞めるのが悔しく、仕事を気持ちで乗り越えていき、就職活動を終えるまでの約2年間勤めることができました。

仕事で役立っている大学時代の経験は？

アルバイトでは、厳しかった分得るものは多かったです。数えきれないほどの親御さんとお話ができたので、初対面の方でも自然に会話ができる力がついたのではないかと感じています。アルバイト先の社員さんとの厳しいやり取りも忍耐力につながったように感じます（笑）。

だからこそ、事件が起きるとすぐに駆けつけなければならないハードな報道記者時代を乗り越えることができたのかもしれません。 また、アルバイトで契約を取れたときにも共通点があったように思います。それは契約を取りたいという気持ちを前面に出さずに自然体で情報を伝えることが大事だということ。感情移入しすぎずに、フラットに事実だけを伝えることを心がけていたことが、偶然にもこの報道という仕事に繋がっているように思います。 

あと、余談ですが、まだスマートフォンがない時代だったので、プリントした地図を片手に家庭訪問をしていました。始めての土地での取材でも方向がわかり、迷うことなく現場へ向かっていました。こういったスキルもこのアルバイトで得た特権です。些細な経験も役立っていることはたくさんありますよ。

就活前にやっておいたほうがいいことは

先輩の紹介で、マスコミ志望の学生が毎週集まり、出されたお題を元に自己分析を交えた作文を書いて発表する場に参加していました。最初の頃はほかの参加者の発表も似通った内容が多く見られましたが、次第に皆“これまでにどんな出来事があって、何に対して喜怒哀楽を感じる人間か”ということを考えるようになり、発表の内容が深くなっていき、それぞれの違いがはっきりと出てくるようになりました。振り返りの中でも特に自分の弱みや苦手なことは目を背けたくなりますが、弱点を認識することで自分に正直になり、相手の弱みも理解できるようになるのかもしれません。 

もう一つ、広告会社のインターンシップをさせていただいたこともその後の生活において視野が広がる大事な経験となりました。まずそこで働く人と話ができること、そして先輩はもちろん、マネできないようなスキルを持っている同期に知り合えたことで、テレビ局の一択だった志望の選択肢を広げてみようと考えるきっかけをくれました。結局テレビ局にはなりましたが、他業界を意識したことでより客観的にテレビ業界のことも考えられたように思います。

一つひとつのお話からその言葉の奥の背景が見えるように丁寧に話してくださる西橋さん。謙虚な姿勢と的確な言葉、やさしい表情には安心感と誠意を感じました。その人柄は報道記者として数多くの方々を取材してきた中で養われてきたものなのかもしれません。発信側となった現在も情報を追いかける忙しい毎日のようですが、仕事を楽しんで、これからも私たち視聴者にニュースを届けてくれるでしょう。

文：竹林佑子（M-3）
写真：宇田川大輔（M-3）
取材協力：株式会社テレビ朝日