【理系研究室訪問】英語が飛び交う国際派! 東京大学生産技術研究所松永研究室に潜入してみた!【学生記者】 4ページ目
東京大学生産研究技術所松永先生に研究・学生への思いを聞いてみた
最後に、この研究室を運営している松永先生に話をお聞きしました!
わこ:改めて、現在の研究テーマについて教えてください。
松永先生:細胞やゲルを使って血管組織を組み立てる組織工学の研究をしています。人工的につくった血管組織で病気が起こる過程や治癒する過程を明らかにする研究を行っています。
わこ:普段研究室ではどのようなことをされているのですか?
松永先生:学生さんにアドバイスをしながら一緒に研究したり、研究発表のため原稿を書いたり、研究費の申請書を書いています。他にも他大学の先生や、企業の方と研究ディスカッションをして最新の研究動向について情報交換をし合っていますね。
わこ:細胞を扱いやすくする「マイクロ工学」というものを耳にしたことがあるのですが、これはどのようなものなのですか?
松永先生:名前のまま、「マイクロのものを作る技術」のことですね。ミリの下の単位がマイクロ。つまり、マイクロスケールで細胞の環境を整えることで、細胞にとっても住みやすく、より人体の状態に近づけて研究できるようになるんです。
わこ:なるほど! 人体の状態に近づけたほうが、より正確な結果が得られそうですね。実験の際には「バイオチップ」というのを使用すると伺ったのですが、それついて教えていただきたいです。
松永先生:バイオ材料が載っているチップですね。まるでパソコンのチップのような(笑)。私たちの場合は、人工的に作製した血管が入った血管チップです。体の中での現象を取り出して変化を観察できるので体のことをより詳しく知ることができます。
▲松永研究室でつくられている血管チップ! 薬の評価などに使われるそうです。
わこ:なるほど! 本当にチップになっているのですね。このような科学技術コンテンツは、文系の私たちにはあまり馴染みがないのですが、その理解拡大のために普段どのようなことに注意していますか?
松永先生:学術研究のときでもわかりやすいような言葉を選んでいますね。また、メディカルイラストレーターという、医療系を専門にしたイラストレーターさんと協力して、研究成果をわかりやすいイラストにしています。そうそう、最近は、研究室の広報部長が誕生しました。Vessy(ベッシー)といいます。血管は英語でblood vesselというので、vessyと名付けられました。
わこ:わあ! 目が大きくてとてもかわいらしいデザインですね。血管がモチーフということも一目でわかります! このようにイラストにすると誰にでもわかりやすくなるのはもちろんですが、今回お話いただいている中でも、先生方にとてもわかりやすいご説明をしていただいたので、普段から気をつけているのだなぁと感じますね。では、この研究の難しさというのはどこにありますか?
松永先生:一番は「再現」についてです。先ほどご覧いただいた通り、私たちはゲルというバイオ材料とヒトの細胞から血管を作って実験を行っています。つまり、人間の本物の血管の機能を忠実に再現できるかということがとても大事なんです。
わこ:なるほど。このように人工的に生体組織をつくる上で、倫理観の兼ね合いで課題はありませんか?
松永先生:とってもいい質問ですね。たしかに倫理観との兼ね合いはとっても大切な課題だと思っています。私たちはこの研究を、必要としている人たちの「ニーズ」に答えて人の役に立つものだと考えています。生命倫理と研究は同時に進まなければいけません。まずは、問題意識を持つことが重要です。そのためにもガイドラインを設定して、わかりやすく伝える大切さが問われています。
わこ:本当にその通りですね。現在の研究は今後、私たちの生活の中にはどのような点で役立つ可能性がありますか?
松永先生:現在血管が関わる病気は数多くありますよね。動脈硬化、がん、糖尿病網膜症など、これらの疾患に効果のある薬の選別から疾患治癒の面で、血管チップで得られた知見が広く活躍できると思っています。また、人は「血管から老いる」と言われるように、血管を若々しく保つことに応用できれば、みなさんが若々しく健康で長生きすることに貢献できるはずです!
わこ:本当に実現したら社会や人々にとてもいい影響を与えそうですね。では、これからの目標は何ですか?
松永先生:そうですね……個別化医療に近づけていくことですかね。みんながみんな同じ医療を受けるのではなく、より個人の状態に合った医療を提供できるようになることが理想だと思います。これからも、人工的な血管チップだからこそわかることを発見していきたいです!
わこ:最後に読者の学生へのメッセージをお願いします。
松永先生:いろいろなこと、海外留学やインターンシップに挑戦してたくさんのワクワク・ドキドキする体験をしてほしいです。私たち教員は学生さんのサポーターですから、失敗を怖がらないで大学生活を楽しんでください!
わこ:本日は貴重なお話ありがとうございました!
まとめ
学生のみなさんや先生方にお聞きした話から、研究に対する思いの強さこそが、新事実の解明につながっているのではないかと感じました。特に、松永先生の「失敗を怖がらないで挑戦してほしい」という言葉が印象に残りました。びくびくしながら歩くのはお化け屋敷の中で十分かもしれません(笑)。この記事が、読者のみなさんの「研究室にはどんな機器があるの?」「理系の学生は普段研究室で何をしているの?」という疑問の答えに少しでもなれば幸いです。
文・わこ