多田さんの「ガクチカ（学生時代一番力を入れたこと）」は？

学業も課外活動も遊びも、すべて全力投球してきました。外国語学部では「4年間やるなら希少価値の高い言語を」と考えてタイ語を専攻しました。最初は全然読めなかった象形文字のようなものが、4年後には読めるようになるという魔法のような経験もしました。大学ではダンスサークルに入っていましたが、それとは別に、バリ舞踊を習ったり、タイの子どもたちに絵本をプレゼントするボランティアもしていました。不要になった日本の絵本を回収し、タイ語に翻訳して、現地の子どもたちに届ける活動です。どの活動もとてもおもしろく、勉強になりました。

また海外旅行が大好きで、多くの国に行きましたし、1カ月ほどオーストラリアにホームステイもしました。ホームステイ先のお母さんがインド人だったこともあり、異文化をじっくり学べる機会になりました。やりたいことはそのときにすぐやっていこうという主義なので、学生時代に頑張ったことの中で「一番はこれ」とは決められません。本当にいろいろなことをしてきましたね。

仕事で役立っている大学時代の経験は？

ひとつは語学に力を入れたことです。仕事で英語を使う機会もありますが、言葉自体がコミュニケーションの壁にならないのは、学生時代に頑張って勉強したおかげですね。もうひとつは、異文化コミュニケーションの経験を積んだこと。たとえばバリ舞踊の教室には主婦や社会人など幅広いバックグラウンドを持つ人が集まっていて、バリ舞踊以外のいろいろな話を聞けるのがおもしろかったです。ボランティア活動にもタイ人がいたり日本人がいたり、年齢層もさまざまでした。また、海外旅行ではよくバックパッカー向けの宿に泊まりましたが、同じ部屋の人と仲良くなることも多かったです。

そんなふうに、いろいろな年齢層や言葉、バックグラウンドを持つ人と関わったことで学んだのは「自分には当たり前のことが、人には当たり前じゃない」ということです。今の仕事でもいろいろな方と会い、コミュニケーションを取る中で互いの妥協点を探るとか、自分の意見をどんな風に相手に伝えるかを常に考えます。そうした部分で、学生時代のこの経験はとても役に立っていると感じます。

就活前にやっておいたほうがいいことは？

就職活動前に限ったことではないのですが、自分が「やりたい」と思ったことはすぐに実行に移すこと。「やりたい」という強い気持ちはその瞬間のもので、時間が経てば変わってしまうこともあるからです。もし自分に合わないと思ったら、途中でやめてしまってもいい。その中で自分は何をしているときが楽しいのか、幸せを感じるのかが見えてくれば、就活にも役立つと思います。

大学時代の私は本当にやりたいことを何でもやっていて、毎日楽しさでいっぱいでした。でもその一方で、たとえば「経営の授業」など、もっと他の学部の授業にも出ておけばおもしろかったのにという思いもあります。そう考えれば、学生時代に挑戦することで役に立たないことは何もないですね。

東京支社で初めての専任広報・IRとして、本社から異動してきたばかりの多田さん。「やはり東京の方が情報量も多いので、海外も含めて多くのメディアと積極的に関わっていきたいと思います」と意欲を語ってくれました。学生時代に培ったバイタリティーと語学力を発揮して、また新しいフィールドを切り開いていくことでしょう。

文：鈴木恵美子
写真：中邨誠
協力：東洋紡株式会社