朴さんの「ガクチカ（学生時代一番力を入れたこと）」は？

高校時代にはボクシング部に所属していました。ボクシングはきつくてストイックなイメージ通り、練習しながら「減量」という特殊なことにも取り組まねばなりません。その意味で、かなり集中できる環境がないと続けられないスポーツだと思います。そこで叩き込まれたのは、部の標語でもあった「自分を乗り越えろ」の精神。どんな場面でも自分に負けたら壁を破れない、目標に到達できないことを学びました。3年間ではいい結果が残せませんでしたが、先生は「この経験を活かして人生のチャンピオンになれ」と励ましてくれました。部活で学んだ精神と、結果を残せなかった悔しさが「将来必ず成功したい」という思いになり、今の行動や仕事につながっていると感じます。

大学に入ってから力を入れたのはアルバイトです。学生時代から食べ歩きが好きで、その費用を稼ぎたくて頑張っていました。居酒屋、焼き肉屋、喫茶店、酒屋の配達、変わったところでは植木屋など。飲食関係を中心にいつも数件掛け持ちしていました。やってよかったと思うのは特に、飲食業界の舞台裏が見られたことですね。たとえば酒屋さんは繁華街にあったので、どんな時間帯に酒が納品されるのか、件数はどのくらいでどんなルートを持っているかなど、毎日の出来事がおもしろくて勉強になりました。

仕事で役立っている大学時代の経験は？

アルバイトで飲食関係の業務経験ができたことです。特に業務用冷凍食品を扱っているので、飲食店の厨房でのオペレーションを体験した経験が役に立っています。たとえば、居酒屋はプロの料理人がいるお店に比べると、料理にかけられる手間が限られてしまいます。そんなとき、どのような工夫をすれば魅力的なメニューが提供できるか、ある程度想像できる。それが現在の商品提案や開発に活かせているのではないかと思います。

植木屋では雑用ばかりでしたが、一般の大学生ならおよそ接点のない、職人の世界を垣間見たことは勉強になりました。職人の方は頑固で癖が強い人が多く、そんな人との会話の機微を学べた気がします。こうした職人気質は、今のお客さまである料理人の世界も同じです。特にホテルは厳しい上下関係があり、上の人は余計なことを話しません。こちらが一方的に薦めても向こうには向こうの考え方があるので、いかに相手に響くワンフレーズを投げかけるか、説得力のある言葉で切り返すかが勝負。そんな意味で、植木屋でのアルバイト経験も少し役立っているかもしれません。

就活前にやっておいたほうがいいことは？

ひとつめは「将来何をしたいか」というイメージをできる限り具体的に描くこと。「この業界で活躍したい」だけでなく「何年後には自分はこうなっていたい」というところまで描いて、そこから逆算して考えることができたら、きっと強くなれるはずです。今仕事をしていても思うのですが、壁にぶつかったときに目標が見えていないとつらく、モチベーションも下がってしまいます。でも「今これを頑張ることによってどんな将来につながるのか」、そうした意識を常に持っていれば乗り越えられると思います。

もうひとつ、もし食品関係の仕事を目指すなら、お金がなくても無理をしてでも、高級店や有名店に行っておいたほうがいいと思います。今まで出会った食に関わる業界の人たちの多くが、若い頃にそうして勉強していたと教えてくれました。僕自身は学生時代から食べ歩きが好きで趣味とリンクしていたのですが、若いうちから「本物」に触れておくことは先々で必ず役に立つと思います。

「将来は海外に出て、誰もやったことがない新しい事業を開拓したいです」と朴さん。営業も商品開発の仕事も、そんな将来を実現するためのステップとして自分から志願したそうです。成功も挫折も含めたすべての体験を力に変え、理想に向かって一歩ずつ前進していくことの大切さを感じました。

文：鈴木恵美子
写真：山野浩司
協力：味の素冷凍食品株式会社