今や私たちの生活になくてはならない冷凍食品。手軽にできておいしい餃子やチャーハン、お弁当商材などにお世話になっている人も少なくないはず。そんな高品質にこだわった冷凍食品作りを打ち出しているのが味の素冷凍食品。今回ご登場いただく田中仁奈さんは、その原料となる野菜の品質向上を目指す基礎研究を担っています。食品の素材を改良する仕事のやりがいについて、そして学生生活での体験についてお話をうかがいました。

今のお仕事はどんな内容？

研究・開発センターの研究グループで、冷凍食品に使う原料の品質を向上させるための基礎研究に従事し、主に冷凍野菜を担当しています。野菜は冷凍することによって鮮度が保てるメリットがありますが、その反面食感が変わってしまうデメリットがあります。そこで、いろいろな加工方法の違いが、冷凍した後の品質にどう関わるかを検証し、評価したり、分析機器での数値化をしています。

長期的な視点に立って、野菜を冷凍した場合のデメリットを克服し、栄養素や味、食感等の品質を向上させる技術を開発するのが私たちの仕事です。

商品開発と違って研究は目に見える成果が出にくいですが、試行錯誤の中で多くの気づきがあることはおもしろいです。思いつきで試したことがいい結果に結びつくこともあれば、きっちり仮説を立てて失敗することもあります。小さな変化に気づいたり、既存のものの組み合わせを変えるだけで結果は変わるので、可能性は無限ですね。

技術を製品に落とし込む段階へ進むと、開発や工場との連携が必要になり、初めて「納期」というものが生まれます。また、制約も増えて、研究所で出来ていたことでも、工場では実現が難しいことも出てきます。そこをどうクリアするかを検討したり、品質と実現可能性の落としどころを探すのも仕事のひとつ。大変ですが、製品化というゴールがある段階なので、やりがいは大きいです。

仕事では研究者目線で自社製品を食べ比べることが多くて、フラットに味わう機会があまりありませんでした。そこで最近、同僚と互いにお弁当を作り合ってお昼に食べています。自社のお弁当商材を消費者として使って食べてみて、改めて「おいしいね」と言い合っています（笑）。素材に対するこだわりあってこそのおいしさなので、研究の励みになりますね。

一番楽しかった＆つらかった仕事は？

入社して初めて先輩社員について担当したのが、「冷凍枝豆」の味をいかにおいしくするかという研究です。その時は栽培から検討していたので「枝豆はこんな風に生産されているんだ」というところからとても勉強になりました。そして加工方法の検討において、おもいきってゆで時間を短くし凍結させてみたらどうだろう？ という案が出ました。通常、冷凍枝豆は食べられる状態まで加熱して凍らせています。それに対して解凍時にもう一度加熱することを前提に、少し硬めのゆで加減で凍結させてみました。

結果、調理解凍後の品質はみずみずしくて歯切れもよく、まるで生鮮でのゆでたてのような味と食感が実現できました。私が関わった仕事で最初に特許出願できたのが、その加工技術です。研究では常識にとらわれずトライしてみると、意外な結果が出ることがある、そのことを身をもって学ぶことができました。入社して最初の仕事だったので今でも一番印象に残っています。

今の会社を選んだ理由は？

「人にとってなくてはならないもの」に関わりものづくりがしたいという思いから、ほぼ食品メーカーに絞って就職活動をしました。さまざまな企業で面接を受けましたが、味の素冷凍食品の印象は、面接で会う人が楽しそうに仕事をしているというものでした。毎回「おもしろい話が聞けたなあ」という充実感があって、その意味でちっとも面接らしくなかったです。他の会社に比べるとリラックスできて、自分の素で話せると感じました。それが入社を決断した決め手ですね。

実際に入社した後も、何でもフランクに話してくれる人が多いという印象は変わりませんでした。先輩社員も気軽に声をかけてくれるし、年齢関係なくなんでも相談できる雰囲気がいいところだと思います。