田代さんのガクチカ（学生時代一番力を入れていた活動）は？

▲学生時代の田代さん

4年間、部活動でパワーリフティングに取り組みました。最初は大学のジムがいつでも申請無しで使えると聞いて入部したのですが、入ってみると実は埼玉大学はパワーリフティングが盛んで強かったのです。ガチガチの体育会系を思い浮かべるかもしれませんが、あくまでも練習は先輩に聞きつつ、個人で組み立てるスタイル。自分であれこれ試しながら、試行錯誤して、結果も自分次第なところにおもしろみを感じましたね。それまでやったことがなかったので、やればやるほど持ち上げられる重量が上がっていくんです。練習すればそのぶん確実に記録が上がっていくので、そんな上達のプロセスが明確にわかることも刺激になって、結局4年間やりました。

仕事で役立っている大学時代の経験は？

個別指導塾のアルバイトで、子どもたちと接した経験は今でも役立っています。塾に来る子は基本的に勉強があまり好きではなく、親に言われて渋々……といったモチベーションの子がほとんどでした。そのため、まずは学びに気持ちを向けてもらうにはどうしたらいいかを考え、勉強以外の学校生活の話などもするようにしていました。「この先生が言うから仕方ない、勉強するか」という動機でもいいのでは、と。そうやってコミュニケーションする中でお互いに信頼感を築いていく過程を大事にしていました。

また、子どもたちに正確に伝わるように、なにかを説明することは難しいものです。内容をかみくだき、相手の気持ちに寄り添って話す能力を養えたことは、仕事全般で、特に中高生に出張講座で社会課題について知り、考えてもらう教育プログラムを立ち上げたときには役立ちました。

就活前にやっておいたほうがいいことは？

たくさんのことを体験することでしょうか。興味があること、あるいは逆にないことも、機会があれば実際に「体験、体感する」ことがよいと思います。時間的な制約の少ない学生時代だからこそできることもあると思います。

就活時にどれだけやりたい仕事を頭で考えても、そもそも仕事の経験も知識もないので、自分の“枠"の中でしか考えられません。子どもに将来なりたい仕事を聞いたときに、皆がよく知っている職業の中から選ぶのと同じです。私は部活をひとつ集中してやっていたぶん、アルバイトはたくさんやってみました。「仕事は“なにをするか"も大事だけど、“誰とやるか"も大事だな」と感じることができたのも、いくつか実際に経験してみたからこそです。あまりおもしろくなさそうな仕事でも、やってみると想像と違う面で楽しかったり、社員さんを尊敬できたり。また塾講師を経験したことで、「人の成長を引き出して、幸せを感じ、楽しくなってもらう」ことに喜びを感じるという自分の一面を発見できました。仕事を選ぶときの「モノサシ」はいろいろなシーンで得ることができるので、情報収集をして知識を増やすというより、できるだけ実際に体験し、その経験から学ぶというスタイルを身に着けることをおすすめします。

私も就活ではたくさん悩みました。なりたい職業が具体的に決まっている友人に対して、「なぜ決められるのか？」と不思議に思っていました。結局、就活で答えを出せたかかと問われれば、そもそも正解はないと思いますが、納得解には近づけたと思いますし、そのプロセスとして貴重な時間だったなと感じています。私は今になってみれば「そもそも就活で、完璧に自分にあった仕事を見つけられなくてもいいのではないか。むしろそれが当たり前なのではないか」と思います。なぜなら、今は世の中に存在しない、あるいはなかなかめぐりあえない仕事の内容やスタイルが、自分に合っている可能性があるからです。就活ではたくさんの企業を見て悩みますよね。どうしてもやりたいことがわからない人は、きっとずっと悩むのではないでしょうか。それでも、止まることなく探す、動く、創ることが大事なんじゃないかと思います。

入社13年目のベテランらしく、どんな質問にもわかりやすい言葉で、直球で返してくれた田代さん。この仕事を続けている根っこには、「誰もが支援される側になる可能性がある。社会課題を知って思いを馳せ支え合う社会に」という強い思いがあるそうです。将来への道に迷ったときは、ぜひ考えるヒントにしてみてください！

文：辻本圭介
写真：ブリッジ
取材協力：公益財団法人日本財団