【NHKの先輩社員】制作局 第1制作センター 経済・社会情報番組部 「プロフェッショナル 仕事の流儀」ディレクター:築山卓観さん

編集部:はまみ

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NHKの築山卓観さん

プロフィール:築山 卓観(つきやま たくみ)
文学部卒。2008年にNHKに入局し、奈良放送局で5年間勤務。大河ドラマなどNHKのドラマが好きでドラマ制作の道へ進むことを希望していたが、奈良で「プロフェッショナル 仕事の流儀」のディレクターを経験したことがきっかけで、ドキュメンタリー志望に変更。2013年、東京に異動し「プロフェッショナル 仕事の流儀」担当に。現在はディレクターとして番組作りに奮闘している。

日本で唯一の公共放送として、ニュースや気象情報をはじめ、朝ドラや大河ドラマ、教育番組など、幅広い分野の情報を視聴者に届けているNHK。大学生のみなさんも、視聴したことがあるのではないでしょうか。今回取材したのは、人気ドキュメンタリー番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」の番組ディレクターである築山卓観さん。現在の仕事内容ややりがい、学生時代に力を入れていたことについてお話を聞きました。

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社会人編取材を通して、相手の人生を体験する

今のお仕事はどんな内容?

さまざまな分野の第一線で活躍するプロの「仕事」を掘り下げるドキュメンタリー番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」のディレクターをしています。ディレクターの仕事は、まず取材対象者の人選を行うところから始まります。時には地方局から推薦を受けることもありますが、基本的には自分たちでアンテナを張って各分野のプロをリサーチし、対象が決定したら撮影に移ります。取材対象者に密着する期間は基本的には40日間ですが、相手の方の仕事内容によって期間が変わることも。2週間から長いときには1~2年に渡って、密着取材を行います。「プロフェッショナル 仕事の流儀」は、プロの方の人生観を掘り下げて、生き様を伝えることができる番組。普通ならお会いできない人に会うことができますし、他ではできない経験をするチャンスがたくさん詰まった仕事です。私自身、この夏放送した女子レスリングの栄和人監督をはじめ、造船職人、難民支援、料理人、落語家、通訳者、農家、そして空港の清掃員に至るまで、番組を通じて本当にさまざまな分野のプロの世界に触れてきました。この番組に限らずNHKの番組作りでは、視聴率という枠組みを気にせずに取材対象とじっくりと向き合うことができるのがいいですね。

先程も少し触れましたが、私たちが取材させていただくのは、その道で一流と言われる人ばかり。取材で日常生活に密着しながら話を聞くことは、いわばその方の人生に片足を踏み入れる行為です。取材を通じてプロの仕事を追体験し、普段は見えない、プロならではの乗り越えるべき壁などを見つけて掘り下げていくのはすごくおもしろいですね。極端な言い方にはなりますが、いろいろな人生を経験しているような感覚が得られます。一方で難しいと感じるのは、取材対象者がプロであるがゆえに、制作者側も取材に対する姿勢や意図を常に厳しく問われるということです。“なぜそのシーンを撮りたいのか"を深く考えて相手に伝え、納得してもらわないと撮影はできません。

この仕事を通じてひとつ、わかったことがあります。それは「見えにくいところに、流儀がある」ということです。どうすればそこに入り込み、撮影させてもらえるのかは、毎回すごく悩みます。ストレートな質問には、相手を怒らせてしまうリスクもあります。でも作り手としては真実を伝えるために被写体の心に飛び込まなければならない。すごく難しいのですが、反面、そこが一番のやりがいではないかと思います。最近、上司から言われた言葉に「被写体を通じて、社会に何を伝えたいのかを考えろ」というものがありますが、これはまさに番組作りの核心にあたる考え方ではないでしょうか。

困難な壁を乗り越えたときには、取材対象者と一生お付き合いできるような関係を築けるのもこの仕事ならではの醍醐味です。特に、羽田空港の清掃員を務めている女性を番組で取り上げた際には、取材を通して「人のために」働くという一貫した姿勢に一個人としても非常に感銘を受けました。今でも自分の判断に迷いを感じたときは彼女に連絡を取り、話を聞いてもらいます。彼女の働き方からは、「一流の人は最終的には、人のために仕事をする」ということを学ばされましたね。その姿勢は、女子レスリングの栄和人監督も同じで、「常に人に誠意を持って、試練を乗り越える」、その強さを学ばせていただきました。

一番楽しかった&つらかった仕事は?

「プロフェッショナル 仕事の流儀」では東京にいる番組ディレクターだけではなく、全国のディレクターが企画を提案し、地方局が主導して取材を行うこともあります。実際、私自身も奈良放送局にいたときに、奈良を中心に活躍している石材職人の方を提案し、それが通って密着取材を担当したことがありました。

その方は、国内では石材で作られた灯篭など文化財の修復、海外ではエジプトのスフィンクスやカンボジアのアンコールワット寺院、イースター島のモアイ像といった世界遺産の修復を手掛けている一流の職人。取材では、アンコール遺跡群の修復作業に密着していたときに衝撃的な出来事がありました。密着していた職人さんが師匠となって、カンボジア人の職人見習いを育てていたのですが、職人見習いが完成させた石細工を、師匠が本人の目の前で破棄したのです。そのカンボジア人がどんな反応をし、行動するのかを見るために、あえて心を鬼にしてやったことでした。破棄した瞬間、カンボジア人は何も言わずに再び同じものを黙々と作り始めました。それを見た師匠は、職人用の服を脱ぎ、彼に着せて「明日からこの現場を君に任せる」と言いました。

ドキュメンタリーの現場では、ドラマ以上にドラマチックな場面に出会える。衝撃的でしたし、自分の中で「ドラマ作りのおもしろさ」を「ドキュメンタリー作りのおもしろさ」が越えた瞬間でした。その撮影を機にドキュメンタリーに魅了され、ドラマ志望から進路を変えるほど、私にとっては大きな出来事でした。

今の会社を選んだ理由は?

大学時代はバックパッカーとして世界中を旅していたのですが、ある夏休みにチベットに行った際に偶然、中国とチベット自治区の内戦に巻き込まれ、状況が落ち着くまで国外に出られなくなってしまいました。その場にいた日本人は、私を含めて20人ほど。状況が落ち着くまで現地の方の家に滞在させていただきました。今考えるとかなり怖いもの知らずですが、近くで銃弾が飛び交い逃げ惑う人々を、手持ちのデジタルカメラで撮影していたのです。内戦の様子を捉えた映像を持っているのは日本人では私だけだったため、NHKに提供することになったのです。実際に提供した映像は「海外ネットワーク」や「ニュース9」といった番組で使用され、それがきっかけでNHKへの思いが強まりました。

最終的に入局を決めたのは、NHKで番組制作の仕事に就けば、ずっとモノづくりの現場でキャリアを積んでいけると思ったからです。民放の場合だと制作職で入社しても、別の部署に異動してしまう可能性も高いので、基本的には同じ現場で経験を積み、キャリアアップできるNHKを選びました。

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