▲大学時代の築山さん

築山さんのガクチカ（学生時代一番力を入れていた活動）は？

大きく分けて2つのことに力を入れていました。1つは幼いころから大学卒業直前まで、プロの漫画家を目指して作品づくりに取り組んでいたことです。「ドラゴンボール」を読んで衝撃を受け、鳥山明先生に憧れたのがきっかけで少年漫画を描くようになりました。中学生になったころから作品の持ち込みを始め、それ以来描いた作品は数十本。私の実家は佐賀県にあるのですが、漫画週刊誌の編集部が漫画家の卵を発掘するためにキャラバンで地方を訪れたときを狙って、売り込みに行っていました。その後、大学に入ってからも何度も編集部に作品を持ち込み続けました。

もう1つは、バックパッカーとして海外のさまざまな国を回ったことです。大学ではエジプト美術史を卒業論文のテーマに選んだので、実際にエジプトを訪れて研究。ミイラやピラミッドなど、古代文明が持つ独特な世界観にロマンを感じていました。美術のなかでも特に壁画に興味があり、エジプト以外に南米のマチュピチュなどにも壁画を見に行きましたね。

仕事で役立っている大学生時代の経験は？

今の仕事で生きているのは、漫画家を目指していたときの経験です。番組の制作では、どんな映像を撮りたいのか、イメージを絵コンテに起こしてカメラマンなどのスタッフに見せ、撮影を進めていくこともありました。漫画と同じように、自分の中で作りたいストーリーを明確に描いておくことも大切です。

ただ、漫画を描くときはキャラクターや背景をデフォルメすることもあるので、漫画の絵コンテとテレビ番組の絵コンテは別物。実際には「そんな角度から撮影はできない」と言われて変更するなど、思い描いたシーンと現実とのギャップもあります。ですが、ドキュメンタリー番組を作りこむ上で、漫画を何本も描き、ストーリー作りをしてきた経験はしっかりと基礎になっていると感じます。

就活前にやっておいたほうがいいことは？

なんでもいいので、とにかく自分が好きなことを１つでもちゃんと取り組むことです。１つの物事をやり遂げるためには、下調べしたり、本を読んだりして核心を掴む必要があります。どんな仕事でもなにか課題やテーマがあり、それを突き詰めていくというプロセスは同じ。1つの仕事に対して、どこまでこだわって丁寧にやれるかということが社会人になれば求められる。自分も大学時代はそれなりに充実していましたが、もっと頑張ればよかったなと当時を振り返って思います。

一流と言われる人たちに密着し、その人の本当の姿や人生の一部を描き出すドキュメンタリー番組「プロフェッショナル　仕事の流儀」。プロが情熱を持って仕事に取り組む姿はもちろん、ときには一流だからこそ生まれる仕事への苛立ちや葛藤も捉えて放送しています。 今回のインタビューで一番印象的だった「見えにくいところに流儀がある」というフレーズ。人は誰もが自分のよいところだけを見せたいと思うものですが、築山さんを始め番組制作スタッフのみなさんが取材対象者の方に真摯に向き合っているからこそ、本質のところまで深く踏み込んでいけるのでしょう。

「取材は大変ですが、それがやりがい」と笑顔で言い切った築山さん。社会人として働くことで、学生時代には決して経験できない、人として成長できる場にたくさん出会えるということが実感できる取材でした。

文：松葉紀子（スパイラルワークス）
写真：中川良輔（株式会社ブリッジ）
取材協力：日本放送協会（NHK）