▲大学時代の加藤さん

加藤さんのガクチカ（学生時代一番力を入れていた活動）は？

塾講師のアルバイトを1年生の4月から4年間続けました。私自身は塾に通った経験はありません。でも小学校のとき所属していたサッカーチームで、中学、高校のときにOBとしてコーチを経験。教えることが好きになり、塾講師のアルバイト募集のチラシを見つけたときに、チャレンジしようと思いました。

塾講師を始めたとき、ただ勉強を教えるだけでなく、一人ひとりの人生を考えて教えたいという思いがありました。でもお手本があるわけではないので、手探り状態。例えば担当した生徒のなかで一人、根はしっかりしているけれど、面倒くさがりという子がいました。勉強を面倒くさがってしないので、まずはその子の学校や生活の話をひたすら聞いて、「塾に来て、先生と話すのが楽しい」と思ってもらうのを目標にしました。最初はなかなか勉強に集中してくれませんでしたが、諦めずに話をするうちに、塾になぜ通っているのか、将来なにをしたいかを考えてもらえるようになりました。そして、将来の目標が少し見えたとき、どこに進学をするか、進路の話をすることができたんです。志望の学校に合格するために必要な学力と現状の学力の差が明確になった瞬間、その子は急にやる気を出してくれるようになりました。

同じ性格の生徒さんは一人としていないので大変でしたが、わからないことがわかるようになったり、テストの点数が上がったと報告してもらったりしたときにはやりがいを感じました。

仕事で役立っている大学生時代の経験は？

一番役に立っていることは、たくさんの大人と話した経験でしょうか。塾では生徒の保護者の方々と話す機会も多かったのですが、当たり前ですがそれぞれ性格が違います。話をするときには、相手がなにを求めているのかを必死に考えて、話を聞いていました。そのときに身に付いた「聞く力」は今の仕事でも活きています。

ほかにも仕事に直結して役立っているのが、情報工学の知識ですね。学生時代にはC言語でプログラミングをしていたのですが、仕事でほかの言語を使うときも基本的な考え方は同じなので、理解は早いと思います。

就活前にやっておいたほうがいいことは？

塾のアルバイト以外にも、土日はサッカーやバドミントン、フットサルなどスポーツ三昧。 音楽も好きで、多い年には20回以上ライブに行くなど、充実した学生生活でした。でも、もっといろんなことをやっておけばよかったと思います。例えばドラマを観るのは好きなのに、映像を作った経験がないこと。学生時代には「社会人になってからやればいい」と思っていたんですが、仕事では好きなことばかりできるわけではありません。だから今、やりたいことがある大学生は、どんどんチャレンジしたほうがいいと思います。

10代でメディア業界に進みたいと思ったものの、大学進学のときには父のアドバイスを聞いて、理系を選んだという加藤さん。大学3年生のときには、自分が本当に進みたい道を見極めるためにIT業界でのインターンシップを経験し、一歩一歩、自ら自分の気持ちを確かめて今の道を着実に選んできた姿が印象的でした。

第三者からすると充実した大学生活を送っていたと思えるのですが、それでも「もっといろんなことをやっておけばよかった」と話す加藤さん。今でも好奇心も探求心も旺盛で、どんなことにもチャレンジしたいと仕事への意欲を示しておられました。充実した生活を送っていると自覚している人も今一度、「自分がしたいことはほかにもあるのでは？」と改めて考えてみるといいかもしれませんね。

文：松葉紀子（スパイラルワークス）
写真：中川良輔（株式会社ブリッジ）
取材協力：日本放送協会（ＮＨＫ）