【宇宙航空研究開発機構(JAXA)の先輩社員】経営推進部 企画調整課:降籏弘城さん 2ページ目
降籏さんの「ガクチカ(学生時代一番力を入れたこと)」は?
一番頑張ったのは勉強と研究でした。やはりちゃんと勉強して卒業しないと、宇宙に近づけないことはわかっていましたから。研究室のテーマは「ヒューマンファクター」。人間が介在するシステムで起こる操作ミスなどのエラーを防ぎ、システムトータルで信頼性を向上させる研究です。メインは原子力プラントに関する電力会社との共同研究でしたが、有人宇宙機であるスペースシャトルの信頼性も題材にしていたことで、その研究室を選びました。大学院時代は原子力発電所に何度も足を運び、社員の方達と意見交換をしました。研究の内容に加えて、世代も業種も違う人たちとの出会いはおもしろく、貴重な体験だったと思います。
同時に学生時代は人脈作りにも力を入れていました。大学はいろいろな地方や海外から大勢の人が集まり、卒業すればさまざまな分野で世界中へと散っていく。そんな人々と人脈を作れるのは学生時代しかないので、かなり意識しましたね。イベントに足を運び、先生について学会に出たり見学に行ったり。新しく人と出会える場には積極的に参加していました。
仕事で役立っている大学時代の経験は?
大学、大学院での研究発表・プレゼンテーションの経験ですね。研究成果は社会に知ってもらい、使ってもらって初めて花開くもの。だから自分の中にいくらすばらしいアイデアがあっても、その価値を人に伝えることができなければ意味がないと思います。電力会社との共同研究でも「我々の研究成果は、プラントの信頼性を上げるためにこんなすばらしい貢献ができます」と説明して納得させることが求められました。今のJAXAでの業務も、世の中に宇宙の価値を知ってもらって新たなミッションを生み出すことですから、伝える力はとても重要です。
もうひとつはチームで研究活動を進めたこと。修士2年になると論文をまとめるために後輩と5〜6人のチームを作り、担当教授の指導の下、同期の仲間、電力会社の人々、学会の人々、先輩など大勢の人と関わりながら研究を進めました。その中でリーダーとして計画を立て、周りに指示を出してチーム活動を進めていくことを学びました。よい研究結果を出すために、チームでシステマティックに活動した経験は、社会人になった今でも非常に役立っていると感じます。
就活前にやっておいたほうがいいことは?
80数年の人生で、こんな人間になりたい、こんなことをしたい、社会に対してこんな貢献がしたいという目標を考えたときに「今やっている勉強や活動は何のためか?」と自分なりの考えを持つことです。僕自身は宇宙に興味がありましたが、明確な目標が見えない場合もあるでしょう。それでも、日々の積み重ねで培ってきた能力や得意分野、好奇心はいずれ「何か」に繋がる日が来るはずです。「今の関心事はこういうことに役立つかも」「自分の力はこんな貢献ができるんじゃないか」と探していく意識を持つこと。それだけで何かに取り組む姿勢は変わると思いますし、楽しさも増すのではないでしょうか。人生は有限ですから、その意識を持ったほうが幸せになれると信じています。
アメリカ、ロシアという宇宙大国に追随した時代を経てようやく世界のレベルに追いつき、新しい局面を迎えているという日本の宇宙開発。「残り20年くらいのキャリアで実現したいのは、日本主導で引っ張る大きな国際宇宙ミッションを立ち上げること。宇宙大国と比べれば予算も桁違いに少ないんですが、予算は少なくてもアイデアで勝負できることを見せたいですね」と降籏さんは語ってくれました。限りある人生だからこそ、好きなことに情熱を傾けよう。夢へのチャレンジはすばらしいと感じるメッセージでした。
趣味:身体を動かすこと(今はタッチフット)
特技:コミュニケーション、英語
就活で受けた企業数:3社
就活で志望していた業界:宇宙、コンサルティング
現在の会社の魅力:仕事に対する誇りを持てること
文:鈴木恵美子
写真:中邨 誠
取材協力:宇宙航空研究開発機構(JAXA)