能動的な学び「アクティブラーニング」の導入で大学の授業はもっともっと面白くなる?

編集部:すい

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今、日本の教育界でちょっとしたホットワードになっている「アクティブラーニング」。4年後にスタートする新学習指導要領に向けて文部科学省が強く推進する学習法ですが、実際に学生にとってはどんなメリットがあるのでしょうか。現在、東京大学教養学部でアクティブラーニングの推進に取り組む吉田塁先生に、その有効性についてお話をうかがいました。

■知識を受け取るだけでなく人に教えることが最大の学びに

−−−最初に、アクティブラーニングとは何なのか教えてください。

ごくわかりやすく言うと、一方向から知識を注入するだけの「受動的な学習」ではなく、教員と学生、あるいは学生同士が双方向のコミュニケーションを行いながら学ぶような「能動的な学習」のことです。ただ、あるアメリカの研究者は「学生の能動的な活動とその思考に関するもの」であればすべてアクティブラーニングであると位置づけています。実は少し曖昧な概念で、明確な定義がないのが本当のところです。

−−−授業にアクティブラーニングを取り入れるメリットとは何ですか?

ひとつは「適切に」導入すれば学習効果が高まることです。先生の講義を聞いてノートを取るだけの学習と比べると、知識のアウトプットを伴う学習のほうが理解が深まることは、多くの研究が明らかにしています。もうひとつは、変化が激しく将来が不透明な現代に必要とされる、「主体的に生涯学び続ける」ためのスキルが身につくことです。ただ、これについては「主体性」や「積極性」の数値化が難しいので、成果を証明するのは今後の研究課題です。

−−−では、活発にディスカッションをすることがアクティブラーニングなのですか?

誤解されやすいのですが、単にディスカッションをすればいいのではなく、それを通じて学生に「何を学んでほしいのか」を明確にしなければアクティブラーニングになりません。目的を達成するために学生にどんな材料を与え、どう軌道修正をしていくかがとても大切なんです。きちんとした目的と手法がないと「学び」ではなく、ただの雑談で終わってしまう危険もありますね。

−−−ではそこでの先生の役割とは、準備した結論へと学生を誘導していくことですか?

そうとは限りません。アクティブラーニングにはさまざまな手法があります。例として、ハーバード大学で物理を教えるエリック・マズール先生の授業を紹介しましょう。授業前に基礎知識を勉強してもらうか教室でレクチャーしてから応用問題を出し、各自考えてもらって回答をもらいます。さらに学生同士のグループで相談させ、再び回答をもらう。そして、先生がその問題に関する解説を行います。

学生が互いに「自分がその答えを選んだ理由」をディスカッションする過程では、何が起きるのでしょうか。まず理解が進んでいる学生は、グループ内の臨時チューター(学生への学習助言や教授の補佐的な役割をする人)的な役割を担います。同級生が理解していない部分を把握して説明することで、自分自身の理解をさらに深めることができます。一方あまり理解できていない学生も、同級生に説明するため頭を整理するうちに「つまずき」の原因が明らかなり、そこから本当の理解に繋げることができます。受動的な講義だけでは身に付かなかった知識も、一度自分で考え、フィードバックしてもらうことで定着していくんです。そして、そうしたディスカッションを経た後、先生の解説を聞くことで更に理解が深まります。

■アクティブラーニングの学習効果はマンツーマン指導に匹敵

−−−たしかに、ただ聞くだけの授業よりも面白そうです! でも効果はすぐに現れるものなのでしょうか?

今お話ししたような「レクチャー→ディスカッション→レクチャー」というサンドイッチ形式の授業は、学生の記憶の定着を良くするというデータがあります。その意味では、即効性があると言っていいと思います。

たとえば学術誌「サイエンス」に発表された2011年の研究があります。学力的に同質な2つの学生グループに対し同じ科目で、A群には従来通りの一方向、B群には対話を伴った双方向の授業を行いました。その後、各グループにテストを実施すると、A群の成績分布は12点満点中5点がピーク。それに対してB群は11点がピークとなり、かなり大きな差が現れました。これは、学生全員にマンツーマンでチューターを付けた場合に匹敵するほどの学習効果だと言われています。

また、90分の授業の中で15分おきに2〜3分学生がお互いのノートを見せ合うだけで、成績が上がったというデータもあります。学んだことを互いに教え合う「協同学習」は「個別学習」よりも効果が高いことは、100年くらい前から積み重ねられてきた知見なんです。

−−−そんなに効果的な学習法なら、どんどん取り入れて行ってほしいですね。

ただ現状は、アクティブラーニングに重要なファシリテーター(学びの支援をする人)の養成が難しい。アクティブラーニングの難しいところは、学生の巻き込み方が少しでもうまくいかないと、授業を壊す可能性もあるところです。同じ教材を使っても、教員によってかなりクオリティが違うケースもあります。具体的にどうやって導入するかについては蓄積が少なく、現在も進行中の研究課題です。今、全国の大学は教育力向上に取り組んでいますが、その中で私もアクティブラーニングの推進を通して大学の授業を変えたいと考えています。

−−−大学教育を変革しようとする立場から、現役学生に向けて伝えたいことはありますか?

もし大学の授業に不満があるなら、ぜひ意思表明をしてください。学生の声は大学側も重く受け止めるはずです。専門的な知識をわかりやすく、興味深い形で学生に提供するのが授業の役割であって、それができなければ自分で本を読んで勉強した方がいい。今、大学の教育は過渡期にありますが、その変化に学生側からも火を付けてほしいと思います。

――ありがとうございます。

いかがでしたか? 板書を写すだけの受動的な授業よりも、自分で考え、議論をし、フィードバックをもらえるアクティブラーニングのほうが、生きた知識が身につきそうですよね。環境を整えている段階とのことですが、導入後の学生の反応が楽しみです。大学生のみなさんは、「アクティブラーニング」について、どう思いますか?

(プロフィール)
吉田塁先生











2010年東京大学 工学部 システム創成学科 卒業。同学 新領域創成科学研究科 修士課程、博士課程を経て、現在は東京大学 大学院総合文化研究科・教養学部 附属教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門 特任助教。

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