被災地の方言を守れ! 石巻発「おらほのラジオ体操」って?

編集部:はまみ

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被災5県(青森、岩手、宮城、福島、茨城)の大学が、方言を伝えることを共通目標として活動し、その内容を、『方言を伝える―3.11東日本大震災被災地における取り組み』という本にして紹介しています。その中には、東日本大震災後に長期避難生活を余儀なくされている人達に行ったインタビューも紹介されていて、方言への思いについては多くが「ふるさと」「空気のようなもの」とこたえています。どうやら方言とは、貴重な文化遺産のみならず、かけがえのない大きな心の支えでもあるようです。

しかし、方言を話せる人はどんどん減っているのが現実で、さらに東日本大震災により被災地の方言は消滅の危機にさらされました。こうしたなか、被災者を励ますと同時に復興への意欲を高めるもうひとつの支援のカタチとして、方言の真価が発揮され、継承活動の機運も高まっています。

●石巻発「おらほのラジオ体操」

「おらほのラジオ体操」とは、お馴染みのラジオ体操を 石巻の方言のナレーションにのって行なうというもので、2011年に宮城県石巻市の地域コミュニティ再生プロジェクトとしてスタートしました。おらほのラジオ体操では、「イヅ、ヌー、サン、スゥ!」のカウントをはじめ、「腕を前から上にあげて背伸びの運動~!」のナレーションが、「んでば めーがら上さあげで おっぎく背伸びっこすっべしー!」と流れてきます。共通語にはないこの響きが、地域住民の連帯感を高めると同時に、石巻にいない人達の心もひとつにつないでいきます。ちなみに、おらほのラジオ体操のみならず、全国各地でお国言葉のラジオ体操が誕生しています。

●研究の幅を広げ方言消滅の危機を救う

ボランティア活動、医療、行政関係者など、被災地で活動する他地域の人達にむけた方言会話を解説するパンフレットなどもあります。たとえば、「支援者のための気仙沼方言入門」には、「救急車がチューチューシャに聞こえた」といった支援者の体験談や、「シャー君(=気仙沼のキャラクターであるサメ)ですか?」「ほでがす(そうです)」という会話例など、気仙沼の方言がわかりやすくまとめられています。

また、東北大学方言研究センターでは、支援者向けのみならず、被災地の方言を記録して後世に伝えることや、避難している方々に故郷の方言を配信することで励ますことまでも網羅した「伝える、励ます、学ぶ、被災地方言会話集―宮城県沿岸15市町―」を作成し公表しています。

これは、原則、各市町70歳前後の男女各1名のペアに会話をしてもらい、方言を録音し、それを文字に起こしたもので、同センターが提供する「東日本大震災と方言ネット」では、文字化資料(PDF)のみならず、音声(MP3形式)も公開しています。方言によるもうひとつの復興支援は、こうした活動を通じ、方言そのものの研究の幅を広げることにもつながっているのです。

――ふるさとの 訛なつかし 停車場の 人ごみの中に そを聴きにゆく

石川啄木は『一握の砂』の中でそう詠っています。どうやら方言とは、想像以上に大きなチカラを持った大切な響きのようです。大学生のなかには、進学や就職で故郷を離れる人も多いと思います。方言を耳にする機会はなくなっても、きっとそれは心の奥深くまで染み込んでいてずっと忘れられないものなのかもしれません。

文・鈴木ゆかり

※参考
東日本大震災と方言ネット http://www.sinsaihougen.jp/
『方言を救う、方言で救う―3.11被災地からの提言』(東北大学方言研究センター ・著)
『方言を伝える―3.11東日本大震災被災地における取り組み』(大野眞男 小林隆・編集)

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