「日本酒は、飲んで味わう日本文化」 - 伊達家御用達「勝山酒造」出身の女子大生が考える日本酒の未来とは?

学生の窓口編集部

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今や世界でブームと言われる日本酒。にもかかわらず酒造業界は人材不足に喘いでいます。確かに私たちは日本人でありながら、日本酒のことをあまりにも知りません。その現状を憂いて「学生日本酒協会」を立ち上げ、日本酒の未来を見据えた活動を展開しているのが、仙台の由緒ある蔵元に生まれた伊澤優花さん。

去る1月14日には、酒造業界を志望する学生と蔵元を結ぶインターン説明会を成功させました。すでに実家での輸出事業を担う彼女の、日本酒への愛と情熱はとどまるところを知りません。この度、説明会の準備で慌ただしい中、イベント実施の直前に時間をいただき、お話を伺いました。


伊澤 優花
東京大学経済学部4年生、「学生日本酒協会」代表。2013年「食と農林漁業大学生アワード」でグランプリ(農林水産大臣賞)を受賞。利き酒師および国際利き酒師(酒ソムリエ)資格習得。酒造技術幹部養成講座・基礎課程修了。

若者が日本酒の素晴らしさを知らない!その現実が「日本酒愛」に火をつけた

−−−伊澤さんのご実家は蔵元だそうですが、小さい頃から日本酒の仕事を目指したのですか?

私の実家は、仙台藩伊達家の御用酒蔵として酒造りにこだわってきた「勝山酒造」という蔵元で、父親で12代目になります。小さな頃から酒米が蒸し上がる香りや、日本酒を醸す香りに包まれながら育ってきました。「灯台もと暗し」と言いますが、実家にいるときは日本酒の存在と素晴らしさが当たり前すぎて、逆に強い思い入れはなかったと思います。

でも仙台を離れて東京での生活を始めると様子が違いました。コンパで居酒屋さんに行くと、お世辞にも美味しいとは思えないお酒が平気で出てきます。日本酒が好きと公言する方も僅かです。若い世代に日本酒は愛される存在ではなかったことが、家業にそれなりの誇りを持っていた私としてはショックでした。
「当たり前だと思っていたことがそうではなかった。日本酒はどうなっているの?」という思いが私の「日本酒愛」を目覚めさせ、それから日本酒について真剣に学ぶようになりました。

−−−そうした思いが「学生日本酒協会」を立ち上げる動機になったのですね?

はい。そのころ高校のOBに紹介いただいた日本酒バーで、オーナーさんやアルバイトの東大生と意気投合し、一緒に団体を作ってイベントをやろうという話になりました。最初は日本酒を楽しむ同好会から始めましたが、次第に日本酒の持つ文化的な側面を勉強する「学び」の場としての性格が色濃くなっていきました。
また、数々のお仕事や、醸造の技術講習の場で得られた、若手の蔵人や蔵元とのつながりが、協会の活動に活かされることも少なくなかったです。学生日本酒協会自体のメンバーは15人ほどですが、20代で構成された日本酒ネットワークとしては、私たちのものが最大規模ではないかと思います。

酒蔵と日本酒を愛する学生の架け橋として、合同インターンプログラムがスタート

−−−今日(1月21日)、学生日本酒協会が主催した蔵元合同インターン説明会が開催されるそうですが。

「求む!未来の醸造家!日本酒のグローバルマーケター!」いうタイトルで、蔵元と日本酒を仕事にしたい学生の出会いの場を設ける説明会です。後日、インターンを希望して採用された学生は、海外事業立案から酒造りまで行うという実践的なものです。就活生を対象に、数社が合同で大規模なインターンイベントを開催するのは今回が初めてなんです。

申込はこちらから。(2016年1月28日まで)

−−−蔵元では若い人材の確保が難しくなっているようですね。

たとえば蔵元がハローワークで「製造業」と掲げ、運良く若者を採用できたとしても、酒造りの大変さは現場に足を運ばないと想像しづらい面があり、そこからなかなか続きません。酒蔵で働くには「日本酒が好き」というモチベーションを携えていないとそもそも難しいと感じます。
そして今、そもそも意欲のある若者が酒蔵にアプローチする手立てがほとんどありません。蔵元側にしても少数精鋭の人材が必要なはずですが、採用方法は未だにブラックボックス。蔵元同士で情報を共有せず、人が足りず困っていても外部に相談したりはしない。伝統産業なだけに、リクルーティングの面においても、かなり保守的なところがあるようです。

国内で酒造りに取り組む若き醸造家」と、「日本酒の伝道師として海外に進出するマーケッター」を求めて

でも、日本酒の将来を考えれば、業界全体のレベルが上がることが大事です。そのためには業界ぐるみで優秀な若手を確保し、育てていく必要があります。今回のイベントは、酒造業界の採用環境を底上げしたいという思いで企画しました。

−−−参加者は100人近くになるそうで、学生の関心の高さを伺わせます。

経営者の理念と、学生の受け入れ体制が整うことを重視してお声がけをし、気鋭の蔵元が5蔵集まりました。今回のプログラムには参加していないが視察したいという酒造関係者の方もいらっしゃいます。今回が成功したら、ぜひ来年以降も継続して、規模を大きくしたいですね。

業界が必要としているのは、国内で酒造りに取り組む若き醸造家であることはもちろんのこと、日本酒の伝道師として海外に進出するマーケッターです。日本の伝統や文化を継承した日本酒を携え、海外で高く評価されることは、大きなロマンであり胸が躍るほど素晴らしいこと。その面白さとやりがいが、今日のイベントで伝わると嬉しいですね。

−−−最後に、伊澤さんの考える日本酒の最大の魅力を教えていただけますか?

日本酒は"日本人だからこそ醸せたお酒"です。移りゆく美しい四季の中で、蔵人たちの職人魂と豊かな感性によって磨かれてきた、まさに芸術品と言ってもいいものです。日本人の繊細や奥ゆかしさ、丁寧さなど、着物や、和食にも通じるような「日本人らしさ」が凝縮されている。
そういう意味で日本酒は、ただの嗜好品ではなく「飲んで味わう日本文化」です。そうした、日本酒の芯にあるものを感じながらより多くの人に味わっていただけるよう、魅力を伝えていければと思っています。

インターンイベントを終えて

イベントは盛況に終わり、伊澤さんから、改めてこの取り組みに関するコメントをいただいた。

「日本酒は造り手をもっとも色濃く映し出す酒。それだけ『人』が肝心な製造業です。酒蔵に就職したい人が、主体的に蔵を選び、自分の本望で入った蔵でモチベーション高く邁進してくれたらいいなと思っています。交流会では、参加者はもちろん、蔵元のいきいきと話す姿がとても印象に残り、企画してよかったなと感じています。
説明会後には、エントリー受付がはじまり、選考、事業立案ワークショップ、酒蔵インターンと続きます。当企画は継続開催、さらに成長させより良いものにしていくつもりです。この取り組みが日本酒を本当の意味で加速させる一助となればいいと思っています。」

彼女が繋げる若い力が、日本酒の将来を明るく照らす助けとなるか。引き続き注目したい。


インターンイベントの模様
※撮影:渋谷和安起(神戸学院大)



文●鈴木恵美子

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