弁護士に聞いた! セクハラの基準や境界線「結婚はまだ?」はアウト? セーフ? 3ページ目
■チェックしてみよう! あなたは大丈夫!?
――どのような事例がセクハラになるのでしょうか?
ちょっと目線が合ったくらいでも「セクハラだ」などと言われる世の中になりましたので、実際の裁判例を見ると「それは当然セクハラでしょう」と、あまり参考にならないかもしれません。
厚生労働省が「セクハラに関するアンケート」の例として挙げているものが参考になると思われます。
●容姿やプロポーションについてあれこれ言う
●性的な冗談を言う
●肩、手、髪に触る
●職場の宴会でお酌やカラオケのデュエットを強要する
●女性労働者にのみお茶くみを強要する
●「おじさん」「おばさん」「○○クン」「○○ちゃん」と呼ぶ
●「女性は職場の花でよい」「男のくせに、女のくせに」と言う
●「結婚はまだか」「子供はまだか」と尋ねる
などの項目がアンケート調査項目として挙げられています。こういった項目も、全て、受け取り方によっては性的なニュアンスを有するもので、労働者から見れば嫌悪感を感じる可能性があるといえますので、不用意にこういった言動は行わないように注意が必要といえるでしょう。
■女性から男性への「逆セクハラ」は!?
――ほとんどが男性による女性に対してのセクハラだと思いますが、逆に、女性から男性に対するセクハラはあるのでしょうか?
篠田弁護士 いわゆる「逆セクハラ」などといわれるものですね。女性から男性に対する性的な嫌がらせも、セクハラに当たります。
例えば、飲み会の後に無理やり女性からホテルに誘う行為や、男性社員に過去の性関係をことさらに尋ねる行為なども、セクハラに当たり得ます。
また、女性上司から、部下の男性社員に向かって、「あなたは私のお気に入りだから次回のプロジェクトも一緒にやりましょう」と発言をした場合、優秀だからというニュアンスであればいいですが、異性として好意を抱いていることをほのめかすようにも見えますね。
この場合、「そんな好意は迷惑だ」と感じている男性社員としては、嫌悪感を覚える可能性がありますし、職場で働きづらくなることも考えられますので、セクハラになり得ます。このように、女性から男性に対するセクハラも十分にあり得るのです。
――やはり、受け手がどう捉えるかに重点があるわけですね。
篠田弁護士 なお、職場におけるセクハラについては、一般に「上司から部下に対して」というイメージがありますが、同僚の間であっても、部下から上司に対する関係であっても、成り立つとされています。
そして、男性から男性、女性から女性に対する行為、いわゆる同性同士の間であってもセクハラに当たることが厚生労働省の指針によって確認されています。
■セクハラ認定されないために、普段の言動に注意!
――会社で気を付けることなどありましたら、アドバイスをお願いいたします。
篠田弁護士 「セクハラ」があまりに強調されると、特に男性は「どんな言動もセクハラになるのでは」と恐れて、必要以上に警戒心を抱いてしまうことがあるようです。
例えば、「土日は何をするの」という発言もセクハラに当たりうるとされますが、一方、この程度の会話が全て禁止されるようであれば、「職場での人間関係」やコミュニケーションは相当ぎこちないものとなってしまいそうです。セクハラは、あってはならないですが、逆に強調され過ぎるのも良くない、とはいえそうですね。
――確かにそうですね。
篠田弁護士 セクハラの原点は、これを受けた人間が嫌だなと思う、すなわち「意に反する」点にあります。
逆にいえば、たとえ「客観的にセクハラ」の行為があったとしても、本人が全く嫌がらなければセクハラには当たりません。
世の中の(特に男性)社員の方々が最も気を付けなければならないのは、「客観的にセクハラに当たるか」を知るというよりは、普段から、「言動が人に嫌悪感を与えていないか」留意し、「良好な人間関係を築いておくこと」に尽きると思われます。
――普段の言動が大事なわけですね。
篠田弁護士 「このくらいの発言は大丈夫であろう」という独り善がりの考えでいると、思わぬところで「セクハラです」と抗議されてしまうこともあり得ます。
そういう意味では、もちろん、セクハラの基本知識は知っておいていただきたいところです。ただ、普段から「相手の立場で考える」「相手を一人の人間として大事にする」という心掛けができていれば、セクハラトラブルに巻き込まれることはないといえそうです。
――ありがとうございました。
やはり、普段から職場の上司・部下・同僚など、一緒に働く仲間と円滑なコミュニケーションを取って、良い関係を築いておくことが大事なようですね。「セクハラ事案」に巻き込まれないように、またセクハラをしない・されないように、皆さん十分気を付けてください。
⇒『アディーレ法律事務所』
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(高橋モータース@dcp)