【学生のうちに身に付けておくべき、新社会人5つの力】第4回:ことば力

更新:2015/06/25

入社準備

次のステップは、相手のことを想像する

伝えたいことがあっても、それを一方的に押し付けるだけでは、かえって嫌な印象を与えてしまうのも事実です。相手のことを考え、それに合ったことばを用いることで伝達効率が格段に上がり、実際の成果に結びつきます。ここでは、『相手』について考えてみましょう。

まず認識しておくべきは、『相手』は必ずメリットを求めるということです。つまり、相手のメリットを既定しないと、ことば選びは始められません。この相手のメリットを既定するためには、相手が抱える課題や期待、相手の好みを整理する必要があります。メリットを理解した上でのトークができるようになると、相手との距離をぐっと縮めることができるのです。

例えば、あなたが眼鏡店の販売員だとします。スーツをパリッと着こなした50歳ぐらいの男性が来店されました。あなたはこのお客様が抱える課題や期待、好みについて考えます。今の眼鏡の度数が合わなくなったのだろうか? 印象が変わる新しい眼鏡が欲しいのだろうか? そんな風にお客様を観察していると、ビジネスでは決して使わないであろうデザインのコーナーを熱心にご覧になっていらっしゃるのに気づきます。あなたは、お客様についての想像を終了し、声をかけます。

「いらっしゃいませ。こちらのシリーズのデザインですと、今おかけになっている眼鏡の印象とかなり変わられますね」

すると「オフの時にかけるのを探しているんだ」とお客さま。

「そうでしたか。今おかけのものは洗練されたイメージですが、こちらのものですととてもアクティブな印象になられます」

「そうかな?」

あなたは続けます。「こちらのシリーズは、レンズもフレームもとても軽い素材でできていますので、休日にアウトドアされるときなどでは・・・・・・・」

あなたが相手に提示したかったメリットは、「アクティブな印象に変わる」ということと、「商品特性である超軽量」の2点。これを「オフ(休日)シーン」と絡めて説明をすることで、課題を満たす商品であることを印象付けました。

もし、相手への想像なしに接客すると、「いらっしゃいませ。その商品はとても軽い素材でできていまして・・・・・・」という、お客さまの「オフで使う眼鏡」という課題・期待を無視したアプローチになってしまいます。

少し相手のことを想像するだけで、結果や印象がガラリと変わる例は身近にたくさんあります。


■相手のことを考えていない悪い例
私が家電量販店に電球を買いに行ったときの店員の応対を例に出してみましょう。

店員の方に「この色の電球はどこにありますか?」と切れた電球を見本として見せました。するとその店員さんは、「その色の電球はすでに生産中止になっています」と。私は続きのことばを待っていたのですが、それ以上はありませんでした。

この場合、私はほぼ確実に「では、近い色はどれですか?」と聞きます。この店員さんは私の課題を少し想像するだけで、「それとほぼ同じ色はこちらになります」という案内ができるはずです。すると私は、さすがプロだなと感心したことでしょう。

つまり、彼はただ質問に答えただけで、代替案を出すなど、メリットを私に提示しなかったのです(あるいはできなかったのかもしれません)。

相手が社内の人であれ、社外の人であれ、仕事とはことばを使った課題解決であり、メリットの提供です。


■相手のことを考えている良い例
逆にこれは感心した例ですが、居酒屋さんに5人で入ったときのこと。春巻きを注文すると、店員さんがこう言いました。

「春巻きは3個なのですが、5人いらっしゃるので、半分に切ってお出ししましょうか?」

これは、店員さんが私たちの状況を想像しながら接客しているからこそ言えることばです。このように、相手を思いやる気持ちが、その場に合ったことばを生み、受注や再来店などの成果に結びつくのです。

入社すると様々な資料や企画書の見本があります。全てを一から作らなくていいように、会社や先輩が事例やフォーマットを用意してくれているのです。でも、便利なこれらのものだけを使っていては、決して「ことば力」は育まれません。『相手』のことを想像しながら、コピペではなく自分でことばを生み出してはじめて「ことば力」は磨かれます。一見、見栄えの良い企画書を要領よく作るのは効率的で立派には見えますが、あくまで表面的なものでしかありません。一方、体裁が悪くても相手の課題を考慮して自分のことばで表現した企画書は、不器用ながらも相手に受け入れられやすくなり、印象に残ります。

次のページ「ことば力」を磨くトレーニング法

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