就職氷河期の再来といわれる昨今。これから新社会人になるフレッシャーズメンバーたちに一体何が求められてくるのか? 社会人としてこの逆境を乗り越えていくのには何が必要か? 『若者はなぜ3年で辞めるのか』などの著作で知られる城 繁幸さんに、この問題について解答をいただきました。
人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。一九七三年山口県生まれ。
東大法学部卒業後、富士通入社。以後、人事部門にて、新人事制度導入直後からその運営に携わる。二〇〇四年独立。『人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見をメディアにて発信し続けている。『若者はなぜ3年で辞めるのか』(光文社新書)は2、30代ビジネスマンの強い支持を受け、40万部を超える大ベストセラーに。08年出版の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。他に日本型「成果主義」の可能性』(東洋経済新報社)等。
この春、入社を控えるフレッシャーズの諸君は、はっきりとは言わないまでも自分の心の中では勝ち負けをしっかり認識していると思う。「自分は第一希望の親からも友人からも尊敬される有名企業の一員になれた!」という人もいれば、逆に「第五志望に辛うじて引っかかっただけ、ぶっちゃけやる気なんてまるでわかない」という人もいるはずだ。
ただ、人事コンサルタントとしていろいろな企業を見ていていつも思うのは、入り口の勝ち負けはほとんど意味がないということだ。日本企業の場合、報酬は40代以降の出世で払う年功序列制度が基本だから、入社時よりも実は20年後が重要になる。でもそんな先の話は誰にもわからない。
僕の就活期である90年代半ばは、金融機関が大人気だったものの入社1年目で会社が破綻してしまった人、4年間で2回も吸収合併され、そのたびにリストラされたという人など、枚挙に暇がない。
ちなみに東大時代の同期で金融機関に進んだ人を50人ほど知っているが、今も同じ会社に残っているものは一人もいない。みな鼻高々に入社したものの、その後の環境激変で「やってられるか!」と転職してしまった同期が多かった。
面白いのは、逆に入社時に「失敗した......」と思っている人ほど、その後の人生で出世しているケースが多いことだ。聞いたこともないようなベンチャー企業に入って、3年間ヤケクソ気味に働くうち取締役になった人もいれば、滑り止め程度に考えていた会社で活躍し、30歳でポストについた人もいる。
某有名企業の幹部からも同じような話を聞いたことがある。今から20年近く前、その会社のトップが不祥事で逮捕され、社会的に大きな制裁を受けた年のこと。内定を辞退せずに入社した一握りの新人は、どん底の経営環境を支えつつ、その後の会社復活の礎を築いたのだそうだ。今も幹部の多くはそのときに入社した人達らしい。
なぜ彼らはそんなに伸びたのか、と聞いたときの話だ。当時の新入社員の一人だった彼は、とても興味深い話をしてくれた。 「座っているだけでは仕事すらない。一生懸命やっているうち、気が付いたら他の会社に行った人達よりずっと伸びていた」。
結局、ウサギとカメの童話にあるように、多少の才能よりも日々の努力がものをいうのだろう。今年あたり「入社と同時に会社存亡の危機」を経験をする人がいると思う。でも、この逆境こそ自分が延びるチャンスだと前向きに捉えて欲しい。それが、何よりの活力となるだろう。
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