「日本のものづくり」に新たな視点を加えて、クラフトビールやスキンケア商品など次々に生み出している「MOON-X Inc.」CEOで、元フェイスブックジャパン代表の長谷川晋さんに「社会人1年目の心得」についてお聞きしました。
PROFILE
長谷川晋
2歳から9歳までアメリカ、シアトルで育つ。京都大学経済学部卒、体育会ハンドボール部主将。2000年に東京海上火災入社、法人営業担当。P&Gで10年間、Pampers・Gillette・Braun・SK-IIなどのマーケティングおよびマネジメントを統括。その後、楽天の上級執行役員としてグローバル17ヵ国および国内グループ全体のマーケティングを管掌。2015年Facebook Japanの代表取締役に就任、在任中にInstagramはMAU810万から3,300万に。2019年8月にMOON-X Inc.を創業。Twitterでは次世代ビジネスリーダー向けに幅広いビジネス経験に基づいた情報を発信中。
https://twitter.com/shinhasegawa8
▼Rethink INDEX
1.社会人と学生で考え方や時間の使い方はどう変えればいいですか?
2.今まで出会った人や本の中で、視座を変えてくれたものは何ですか?
3.社会人生活の中で「これは無理だ、出来ないかもしれない……」と思うようなシチュエーションに直面した際、どのように乗り越えればいいですか?
4.長谷川さん自身の失敗エピソードを教えてください。そのときにどう突破しましたか?
5.望んでない仕事が与えられた場合、長谷川さんが考える「頑張れる限界」はどの程度でしょうか?
6.新人の頃は、プライベートと仕事を切り離していましたか? 今の長谷川さんは、休日や隙間時間で何をしていますか?
7.経営者の立場から、どんな新入社員と働きたいですか?
僕自身は学生のときから、そんなに根本的なキャラやマインドは変わっていないかもしれません。僕が一所懸命ものごとに取り組むのは、仲間と一緒に、本気で取り組んで勝つ。勝ったらお祝いして、みんなでお酒を飲んだりして楽しむ。それが今も昔も、一番のモチベーションなんです。
でも、時間の使い方は変わりましたね。自分のエネルギーレベルを高く保つための習慣にこだわるようになりました。今は毎朝5時〜5時半くらいに起床し、朝は必ず白湯を飲みます。で、30秒くらい瞑想して、通勤中は漫画を読んでテンションを上げる。こういうエネルギーレベルを高める習慣は、学生時代には実践できていなかったですね。
一番衝撃を受けた本は、棋士の羽生善治さんの『決断力』です。
この本には「どうやって腹を決めるか」ということが書かれているのですが、羽生さんはシビアな勝負の世界で勝ち続けながら、「直感の7割は正しい」と書いていて、これはすごく説得力があるし、示唆に富んでいました。何度も読み返し、いろんなものを自分の中に取り入れたと思っています。
人はたくさんいますが、楽天で直属の上司だった島田亨さんとの出会いは衝撃でした。僕はグローバル企業を渡ってきた人間ですが、島田さんは株式会社インテリジェンスを設立し、その後は若くして投資家として歩んできた人です。僕とは全然違ったキャリアですが、縁があって近くで働くことになり、これまでとは全然違った視座を与えてくれました。
答えは割とシンプルで、「目標を変える」に尽きます。
やっぱりどうしても無理なものはあって、それは自分の能力や頑張りが原因ではなく、そもそもの目標設定を間違えている場合がほとんどなんですよね。
しかし、非現実的だったからといってただ単に目標を下げるのではなく、会社の状況や自分の状況を冷静に見極めて、どう目標を変えれば、まだ意味のある目標として成立するのか、という点を、視点を変えて考えたほうがいいと思います。目標は非現実的では意味がないけど、頑張らなければ達成できない絶妙なラインであるべきです。そう考えながら目標自体を見直すことが大事だと思います。
僕は今、自分の事業をやっていますが、簡単に言えば当初は「良いものを作ったらちゃんと売れるかな」って思っていたんですよ。でも、実際に良いものを作ってサイトに載せてみたところ、思ったほど立ち上がらなかったんです。当然ですが、大企業の大きなブランドと違って、立ち上げたばかりの事業なんて誰からも信頼されていません。にも関わらず、大企業でと同じ発想でやっていたことは失敗でしたね。
このキャリアになっても、まだそんな初歩的な失敗もするんですよ。ただ、失敗しないと気付かなかったこともあるので、大事なのは失敗の教訓を活かし、どれだけ早く軌道修正するかということだと思います。
実は、大事なのはどこまで頑張れるかの上限ではなく、そもそも自分の中から力が湧き上がってくるような環境にできているかどうかだと思います。押し付けられている仕事は頑張れなくても、自らやりたい仕事なら頑張れるものです。それは子どもの頃から同じで、小さい子が何時間もレゴで遊んでいるのは、やれと言われてやっているからではなく、自分がやりたくて熱中しているから。
つまり、どこまで頑張れるかは熱中できる環境整備ができているかどうかによります。与えられた仕事でも、自分が熱中できるようなテーマを設定して取り組めば、上限も自ずと変わってきます。飲み会の幹事も、イヤイヤやると頑張れませんが、「幹事を引き受けることで、段取り力を見せつける」という視点で臨めば、ワクワクしてとんでもなく頑張れるはずです。
休日は運動したり、本を読んだりあとは最近、オーディブルにハマっています。オーディブルなら、活字だったら読まなかったであろう本の朗読を聴くことができます。例えば哲学の本や歴史の本で、最近は『ホモサピエンス全史』や『哲学入門』を聴きました。
仕事とプライベートは昔から「ワークライフバランス」よりも「ワークライフインテグレーション」のほうがしっくりきていて、生活の中に仕事もプライベートもあって、それが全部一体化しているイメージですね。
あまり「パキッとわけなきゃ!」とは思っていなくて、むしろ平日に運動をしにいくこともあるので、明確なラインは設けていないですね。
一緒にいてワクワクする人と働きたいですね。もちろん優秀であることも大事かもしれませんが、「こういうことをやりたい」「こんなすごいやつになりたい」っていうビジョンを持っている人は、一緒にいてワクワクします。
人間って、「これをやってよ!」ってオーダーされるとテンションが下がるんですけど、「こういうことをやりたいから助けてほしい!」って言われると、思わず手を差し伸べたくなる生き物なんです。
自分の意見を持っている人は見ているだけでワクワクするので、そういう人と一緒に仕事したいし、皆さんもそういう人になってくれると嬉しいなって思います。
文:猿川佑
編集:学生の窓口編集部
取材協力:MOON-X株式会社 https://www.moon-x.com/
Twitterでは次世代ビジネスリーダーに「#ビジネスの戦闘力」を高める情報を発信中。 https://twitter.com/shinhasegawa8
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視点を変えれば、世の中は変わる。「Rethink PROJECT」がつたえたいこと。