美人に対する“あからさまな態度”ってどうなの? #モヤモヤバスターズ

2020/06/30

社会人ライフ

社会人のみなさんの、なかなか言えないモヤモヤを解決していく連載 #モヤモヤバスターズ。 春夏シーズンは“ジェンダーに関するモヤモヤ”を解決していきます。

今回の相談者YUIさんは、「美人や可愛らしい人に甘い」という職場の上司たちにモヤモヤしているそう……。 果たしてモヤモヤバスターズ隊長、瀧波ユカリ先生の回答は?

★今回のモヤモヤ(お相手:職場の上司)
私はずっと内勤の仕事なのだが、やはり上の立場の男性社員や役職のある人は、美人や可愛らしい人に甘いように見える。あからさま過ぎる贔屓などは無いのだが、自分のときと、見た目の良くて世渡り上手な女の子のときとで反応が違うのでモヤモヤする。女の子は知らない事があるのが可愛い、それを男性に聞いて教えてもらって更に可愛がってもらう、といった風潮には頭に来ることが多い。私が頑張って調べてできるようになったことや、業務上知っていると便利なことを習得していても、知らないですぅと男性社員に甘える可愛らしい女の子の方がよく見られているような気がして不満。
(YUI/女性)


こんにちは。モヤモヤバスターズ隊長の瀧波です!

「職場の上司たちが、美人や可愛らしい人に甘い」。
この、ごく短いセンテンスを伝える時、私たち女性は慎重に相手を選ばざるを得ません。

なぜなら……相手によっては、こういう言葉が返ってくるから。

a「あ、美人に嫉妬してるんだ?」
b「君も優しくしてほしいんだね、寂しいの?」
c「それって女の敵は女ってやつ?怖っ!」
d「おもしろそう!その女たちの悪口もっと聞かせてよ」
e「上司だって、しょせん男だから許してやって」
f「○○ちゃんだって、じゅうぶん可愛いよ!」
g「君ももっと女子力つければ?」
h「気にしすぎじゃない?」
i「世の中そういうもの。いちいち傷ついてたら生きていけないよ」

ちがうちがう!そうじゃない!
……ってこっちが真顔で鈴木雅之になったとて、聞いちゃくれない。

ちなみにこの返答をタイプ分けすると…

・気持ち決めつけタイプ(a,b)
気持ちの話などしていないのに「嫉妬している」「寂しい」などとこちらの気持ちを決めつけ、感情論へと矮小化する。

・女の戦い楽しみタイプ(c.d)
女V.S.女の構図に持ち込み、楽しむ。女は陰湿で男は単純という結論を好む。

・男はバカだから無罪タイプ(e)
男性を非難しているようだが実際は「バカだから許してやれ」と免罪を持ちかけている。

・上司側に立つタイプ(f,g)
上司目線でジャッジしたり、どうしたら美人として扱われるのかをアドバイスしてくる。

・問題を問題視しないタイプ(h,i)
問題として取り上げること自体を否定する。


こんな感じだから、そもそも話題にすること自体がひじょーーーーーーにめんどうくさいんですよね。それに若い頃は特に、言われたことをストレートに受け取ってしまいがち。「そうか、女の敵は女なのか……」とか「男はバカだからしょうがないのか……」とか「女子力つけてがんばったほうがいいのかな……」とか。それで女のせいとか男のせいとか自分のせいとか、間違った場所にうっかり着地してしまう。そして苦しんでしまう。

前置きが長くなっちゃったけど、モヤモヤバスターズ隊長である私がYUIさんのモヤモヤに対して答えるなら、シンプルに

「それはハラスメントに該当します」
です!

なぜかというと、
・相手の容姿や愛想が自分の基準に沿うかどうかで態度を変えているから

もう、この1点。どシンプルにザ・ハラスメント。もっと言うとセクハラだしパワハラ。てか、「美人や可愛らしい人」と「そうじゃない人」を、たとえば

「普通体型の人」と「太っている人」
「若い人」と「中年」
「イケメン」と「それ以外」
「女」と「男」
「日本人」と「外国人」

などに置き換えて想像したら、ダメなやつってすぐわかりますよね。

職場で要求されがちな「女性らしさ」って?

でも、こう言ってくる人もいるんですよね。

「職場で女性らしくして容姿を整えて親しみやすく振る舞うのも、女性社員の仕事のうち」

とかね。いやそのツッコミ自体セクハラだし。そこに男女の非対称があるからダメなんですよ、だったら男性社員も「男性らしく」「容姿を整えて」「親しみやすく振る舞う」をやってくれなきゃ、って話ですよ。でも男性らしさや容姿や親しみやすさの基準はこっちで決めるので、こっちの反応を見て適宜調整してくださーい!ってことですよ。

そうそう、職場で要求されがちな「女性らしさ」「容姿」「親しみやすさ」がどんなものかってところも重要ですね。まとめると、こんな感じ。

・女性らしさ…おしとやか、控えめ、きれい好き、穏やか、聞き上手、寛容
・容姿…優しい目、薄化粧、落ち着いた服装、幼い印象
・親しみやすさ…機嫌がいい、知らないことが多い、多少のセクハラは笑って受け流す

私にとっては強くてセクシーで派手なファッションであけすけな姉御だって「女性らしくて整った容姿で親しみやすい」です。でも多くの場合、特に職場ではそうじゃない。

なぜ前述のような「らしさ」や「容姿」が良しとされるのかというと、その基準が

「男性に脅威を与えない、安心して可愛がれる存在か否か」

というところにあるからです。女性社員の容姿や愛想で態度を変えるような男性上司は、自分に脅威を与えない安心できる可愛い存在がお好みである、と言うこともできます。

つまり、そういった男性上司とうまくやるためには「私はあなたに脅威を与えませんよ」というアピールを可愛らしく遂行しなければならないし、そのアピールができなければうまくやれない可能性もある、ということになりますよね。

(強くてセクシーで派手なファッションであけすけな姉御タイプや、安心安全無害無知アピールを可愛らしくできない、したくない私たちはどうすりゃいいんだ!!!)

職場のあるある文化にしてはいけない


必要に応じてがんばって演じるか、冷遇やむなしという諦めと共に働くか。どっちを選んでも、消耗する。どっちを選んでも、「これでいいのだ」という確信は持てない。

「わからないです」と言って上司に頭をポンポンされているあの子は、1年後の自分かも知れない。そのまた1年後の自分は、全てを諦めた目をして働いているのかもしれない。本当はあの子は上司に好かれるのが気持ち悪くて、ひっそり病んでいるのかもしれない。ああ、全方位的に、つらみが深い。

この風潮はとても根深いので、そう簡単にはなくなりません。ハラスメントという意識すら薄いし、私が冒頭に書いたように気安く話題にすることすら難しい。そんな中で私にできることは「それってこういうこと!」と言語化して伝えること。まずはもうどシンプルに「そういうの、ハラスメントだから!」って認識を広めていきたい!

そうだ、最後にこれを言っておかなきゃ!YUIさんが「モヤモヤを感じる相手」を、「可愛らしい女性の同僚」じゃなくて「上司」って書いてたこと、すごいな、いいなって思ったんですよ。モヤモヤの矛先を間違えないことって、とっても難しいから。

そんなYUIさんだからできることが、きっとあります。そして、これを最後まで読んでくれたあなたにも。みんなで少しずつ、変えていきましょう。

文・瀧波ユカリ
漫画家、エッセイスト。北海道生まれ、日本大学芸術学部写真学科卒業。主な著書に『臨死!! 江古田ちゃん』『ありがとうって言えたなら』等。雑誌Kissにて『モトカレマニア』連載中。

Twitter:@ takinamiyukari
公式サイト:Takinami Yukari Official Site


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