遅刻からも学べることはある! 瀧波ユカリの #フレッシャーズサバイバル

更新:2020/01/30

付き合い・人間関係

社会人のみなさんが新人時代に経験した失敗談を解決していく連載 #フレッシャーズサバイバル。今回は、“遅刻が原因で上司に誤解されてしまって、つらい”という方からのお悩みです。遅刻の経験がある……。そんな方は要チェックです。

夜勤のシフトが入っていたのに、寝坊で1時間遅刻をしてしまいました。このことで、上司から「夏休み明けで、仕事をしたくない気持ちも分かるけど……」と言われましたが、決して仕事へ行きたくなかったわけではなく、ただの寝坊なのに……。とモヤモヤしています。
(ゆうみ/社会人(学校・教育関連)/22歳)


遅刻は、言い訳が功を奏することもある

1時間遅刻! それはけっこう、やらかしましたね。

私、実は遅刻ってほとんどしたことがありません。怒られたくない一心で時間だけは守る、いわゆる「ビビリ」タイプなのです。

ですが、一度だけ大学のサークルの集まりに1時間以上遅れてしまったことがあります。朝目が覚めたら、集合時間を余裕で過ぎていました。飛び起きようとしましたが、寝起きのせいか体が思うように動かない!

ああ、どうしよう…呆然と天井を見ていると、携帯電話が鳴りました。

「お前、何やってんの?どこにいるの?」

サークルの部長の厳しい声色と、他の部員たちの気配が電話の向こうから聞こえてきました。どうしよう、正直に「今起きました」と言うべきだろうか。一瞬の逡巡の後、私はこう言いました。

「すみません、今、両足が攣っているんです!」

それから慌てて支度して駆けつけると、私はみんなにさんざん笑われました。
「両足が攣って遅刻ってどんなだよ!」
厳しいことで有名な部長は、苦笑しながらこう言いました。
「遅刻はだめだけど、両足が攣ってたならしょうがないな」

私はもちろん、話を盛った(寝起きで体が動きにくいだけなのに、両足が攣っていることにした)ことに罪悪感がありました。でも、とっさについた嘘でちょっと現場が盛り上がっているのを見て、なるほど、と思いました。それはこういうことです。
なんの理由もない遅刻より、なにか理由がある遅刻のほうが、たしなめる立場の人も許しやすい。

もし私があのとき「ただの寝坊です」と言ったら、部長は私に
「サークル活動をなめてるのか」
「みんなは時間を守っているのに」
などと、ただただ責める形で説教しなければならなかったでしょう。

では、「具合が悪い」とか「昨日の夜遅くまでバイトがあって眠り込んでしまった」とか、ありきたりでも何かしら理由をあげていたら?
「体調のせいならしかたないが、遅刻の連絡はもっと早くしてほしかったな」
「バイトも大事だけど、スケジュール管理を気をつけような」
などと、相手を気遣いながらたしなめることができる。それって、ただ責めるよりは、言いやすそうですよね。

そして実際に使った遅刻理由「両足が攣った」への対応はどうだったかというと、前述の通り。
恐らく部長は、内心「嘘だろ」と思いつつも、そこまで意外なことを言われるともう笑って許すしかない……という心境になったのではと思うのです。

とはいえ、これは嘘なので。基本、やっちゃだめです。
今この話を持ち出したのは、「叱る側もそのほうが叱りやすいから嘘をつけばいい」とか「面白い嘘でピンチを切り抜けよう」みたいなことを言いたいからではありません。繰り返しになりますが、指導する立場にとって「ただの寝坊」という遅刻理由は、一番やっかいで扱いにくいものだということです。

その「モヤ」は先輩のやさしさゆえかも?

さて、

「夏休み明けで、仕事をしたくない気持ちもわかるけど……」

ゆうみさんの上司がこう言ったのは、ただ責めるだけの説教をしたくなかったからではないでしょうか?

本当はただの寝坊だったと気付いていても、
「寝坊だなんて、たるんでるんじゃないか」
などと一方的に叱りつけるようなことは言いたくなかった。だから、夏休み明けだからそういう気持ちになるのもわかるけど……と、理解をしめした上で苦言を呈する形にした。
もしそうだとしたら、それって「優しさ」ですよね。

ゆうみさんは、仕事をしたくない気持ちになっていると決めつけられたようで心外だったかもしれませんね。でもそれは実は上司の優しさだったのかも……と想像してみると、上司の方のイメージがちょっといいほうに変わるんじゃないかなと思います。

そして、近い将来ゆうみさんも先輩になります。そのときに新人さんが「ただの寝坊」をして出社してきたら、今回の話をぜひ思い出してみてください。きっと、役に立つはずです!

あ、「両足が攣った」もいつか、ここぞというときに使ってみてください。1回だけなら私が許します。

文・瀧波ユカリ
漫画家、エッセイスト。北海道生まれ、日本大学芸術学部写真学科卒業。主な著書に『臨死!! 江古田ちゃん』『ありがとうって言えたなら』等。雑誌Kissにて『モトカレマニア』連載中。

Twitter:@ takinamiyukari
公式サイト:Takinami Yukari Official Site


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