「御用達」の読み方と意味 起源は江戸? もともとの使われ方は?

2018/10/30

ビジネス用語

お店やネット通販などでものを買うとき、「○○○御用達」というキャッチフレーズがついているのを見たことがありませんか? これがあると、「なんだかすごそう!」と思いますし、食べ物ならおいしそうに感じられるもの。この「御用達」とはいったいどんな意味を持つのでしょうか? またこの言葉の使い方についてもご紹介します。

「御用達」の意味や読み方

「御用達」の意味とは

『広辞苑』で「御用達」を調べてみると、

ごよう-たし
【御用達】
(「ごようたつ」「ごようだち」とも)
御用商人に同じ。

と記されています(『広辞苑 第六版』P.1061より引用)。
「御用達」の読みは「ごようたし」が一般的ですが「ごようたつ」「ごようだち」と読んでも誤りではないようです。
では、意味を知るために「御用商人」について引くと下のように説明されています(引用元同上)。

ごよう-しょうにん
【御用商人】
1 江戸時代、幕府・諸藩に出入りを許され、商品を納め、また金銭の調達などを斡旋(あっせん)した、特権的な商人。御用達。
2 許可を得て、宮中または官庁の用品を納めることを生業とする商人。御用達。

つまり、「御用達」とは、「幕府、諸藩、宮中に納めること」という意味のほかに、幕府、諸藩、宮中に商品を納める「御用商人」の意味もあるのです。

江戸時代、幕府・諸藩・宮中に用品を納めることができる商人は限定されていて、彼らが納める品は幕府・諸藩・宮中から特に認められたものに限られていたのです。
その「特別感」が、現在でも「御用達」に「なんだかすごそう」「おいしそう」というイメージを与えていると言えます。

「御用達」の歴史

「御用達」という言葉が使われるようになったのは、江戸時代に入ってから。幕府や諸藩、いわゆる「お上」に納品される商品は、「お墨付き」として品質が高いという保証になりました。
そして、御用商人に指定された商人は、一般商人よりも「格が上」とされ、町人であっても名字・帯刀を許されることもあったのです。

そんな御用商人のひとり、「本能寺の変」が起きたときに徳川家康の伊賀越えを助けた「茶屋四郎次郎」は江戸初期に活躍。「公儀呉服師」として徳川家の呉服の御用を一手に引き受けるなど豪商として高い社会的地位を築きました。社会の教科書にも登場する「紀伊国屋文左衛門」も、幕府御用達の材木商です。
元禄期に莫大(ばくだい)な財産を築きますが零落し、晩年は寂しい人生を送ったと言われています(それまでに築いた財産で晩年も裕福だったという説もあり)。

江戸時代には諸藩でも多くの御用商人が活躍しました。その藩独自の銘菓などの中には現在まで伝わっている「御用達の商品」もあります。
加賀藩御用達だった干菓子『長生殿』はその代表格。製造販売を現代に受け継ぐ『森八』は、創業が1625年(寛永2年)という和菓子店で、『長生殿』という名前は小堀遠州(千利休の弟子のひとり)が名づけたとされています。
約400年もの歴史を持つお菓子が現在にまで伝わっているというのは、「御用達」という名の下に大事に扱われてきた証拠と言えるでしょう。

明治時代になると「宮内省(現・宮内庁)御用達」が注目されるようになります。
大日本帝国憲法では「宮内省御用達」と名乗れるのは厳しい審査を経てから、と定められていました。
つまり認可制だったわけです。現在ではそのような審査制度はありませんが、それでも「宮内庁御用達」と聞くと特別感があります。

「御用達」は、どのように使われるの?

以上のように「御用達」は、「御用商人が幕府・諸藩・宮中へ物品を納めること」「御用商人」という意味だったのですが、現在では「御用商人」という意味は薄れ、「○○という権威あるものに納められたもの」という意味合いが強くなりました。
そして「宮内庁」や「○○藩」を前につける伝統的な使い方のほか、今風の表現も出てきています。

「御用達」を使う表現として多いのは、
・宮内庁御用達
(※宮内庁では納品業者のリストは公開していません)
・○○藩御用達
そして、海外の王室が愛用している商品について、
・○○王室御用達
といった使い方をすることもあります。

また、セレブ、芸能人、タレントなどが愛用する商品や店舗も、多くの人の注目を集めることから、
・○○さん御用達
・セレブ御用達

などと表現することも少なくありません。

まとめ

「御用達」は江戸時代に一般的になった言葉で「御用商人が幕府・諸藩・宮中へ物品を納めること」「御用商人」という意味です。現在では、セレブ・芸能人・タレントが愛用する物品、またそれらの人たちがよく訪れる店舗についても「御用達」と表現することがあります。これは、「あの人が使っているのならすごいはず」という保証を与えるからかもしれません。


文・高橋モータース@dcp/編・イマーゴ

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