「存じ上げる」の意味と正しい使い方【例文付き】

更新:2018/11/06

対人マナー

日本語には「敬語」があります。正しい敬語を使うのは社会人のマナーですが、細かい決まり事が多く難しいと感じる人もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、そんな敬語の一つ「存じ上げる」という言葉について、意味や正しい使い方をご紹介します。


「存じ上げる」は謙譲語

ビジネスの場では「存じます」「存じ上げております」という言葉が一般的に使われています。これは「知る」「思う」の謙譲語です。それぞれの使い方については以下のような点に注意しましょう。

「存じる」は物や場所に使う

一般的には「存じます」「存じております」のように、丁寧語の「ます」と組み合わせて使う場合が多い言葉です。「存じる」は以下のように使います。

例1
部長「○○社の新商品のことは知ってる?」
社員「はい、存じております。」

例2
顧客「次回のミーティングは○○日と▲▲日とどちらにしましょうか。」
部下「では、○○日に伺いたく存じます。」

例3
お忙しいとは存じますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

例1は「知っています」という意味、2と3は「思います」という意味で「存じる」を使用しています。

「存じ上げる」は人に対して使う

「存じ上げる」は「存じる」のより丁寧な表現ですが、どんな場合でも「上げる」を着ければいいのかというと、そうではありません。
「~上げる」という表現は相手が「人」の場合で、さらに敬意を強調する際に使うとされています。本は神仏に献上する供物(くもつ)を、高く差し上げていたからともいわれています。単に「存じる」という場合には特に対象の制限はなく、人以外に物や場所などに対しても使います。「存じ上げる」を使った例文は以下のようになります。

例4
部長「○○社の○○社長のことは知ってる?」
部下「はい、お名前は存じ上げております」

例1と似た状況ですが、この場合は「存じる」対象が「人(○○社長)」なのと、さらに敬意を強調するために「存じ上げる」を使っています。「知っています」でも決して間違いではありませんが、このような砕けた言葉遣いは、普段からコミュニケーションを取っているような身近な人が相手のときだけにしておきましょう。

「存じ上げる」を否定形で使う場合、機械的に「存じ上げません」と言いたくなりますが、ビジネスの場面では堅苦しい印象を与えたり、嫌みに思われたりすることがあるため、使用を控えるという考えもあります。このようなときは「分かりかねます」などと置き換えて使います。敬語を使うときは、大げさな言い方になっていないかにも注意しましょう。

「存じ上げる」の間違った使い方

「存じ上げる」は謙譲語なので、自分の行動に対してのみ使うのが正解です。以下のような使い方は間違いなので気を付けましょう。

例5
部下「私の同期の■■君が結婚するそうなんですが、部長は存じ上げていますか?」
部長「■■君のことは知っているけど、結婚のことは初めて聞いたよ」※

「存じ上げる」は謙譲語であり、上司である部長の行動として使用するには不適切です。この場合は「ご存じでしたか?」と言うのが良いでしょう。ただし、「存じる」が謙譲語である以上、これでも厳密には正解といえないのですが、「ご」を付けることで尊敬を表すようになり、許容の範囲であるというのが一般的な見解のようです。

※この例文の部長は自然に対応していますが、一般的には「敬語の使い方がおかしい」と指摘を受けるでしょう。誤用の見本ということでご理解ください。

「存じ上げる」というのは敬語の中でもかしこまった表現です。その対象が「人」で、かつ敬意を強調したい場合に使いましょう。そして上司や先輩など、目上の人の行動として使うのは間違いです。正しい使い方を覚えられれば役に立つでしょう。

(藤野晶@dcp)

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