みなさんは将来に対するお金の不安を持っていますか? 社会人になると自立した生活を送るために金銭や資産の管理も自分自身で行っていく必要があります。そんなときに知っておくと役立つのが社会保障制度や会社が用意している福利厚生制度です。今回は、若手のうちにぜひ知ってもらいたい社会保障制度や会社の福利厚生制度について、ファイナンシャル・プランナーで株式会社クレア・ライフ・パートナーズ代表を務める工藤さんに聞きました。
私が代表を務める会社では、現在20名ほどの大学生がアルバイトとして働いてくれています。20歳前後の学生たちと話していると、社会に出ることにとても意欲的ではあるけれど将来に対するお金の不安もたくさん持っている、ということによく気付かされます。恐らく、この記事を読んでいただいている方の中には、将来への不安を抱えている方が多いのではないでしょうか。ですが、不安だけを抱えているだけでは何の解決にもなりません。日本人はきちんとした金銭教育を受ける機会がなかなか無いので解決策を見つけるのは難しいはずです。だからこそ、給与から引かれる「社会保障費」が何に使われているのか、勤める会社にどんな福利厚生制度があるのかくらいは、働くうえでぜひ知っておいてもらいたいです。
日本には国民皆保険という体制があるため、皆さんは既に何かしらの医療保険に加入しています。それが、学生の皆さんはご両親の給与から、社会人の皆さんは自分の給与から引かれている健康保険料です。保険証を出せば医療費を3割に減らしてくれるということはご存知かと思いますが、実はそれだけではありません。知らないだけで損をする保障が存在しているのです。
1ヶ月に支払った医療費が一定額を超えたとき、払い過ぎた分が高額療養費として支給されます。高額医療費の負担が心配な方でも、ある程度の貯蓄があるのであれば、民間の医療保険に加入する必要はないかもしれません。
やむをえない理由(ケガ・病気など)で長期間会社を休み続けた場合、その期間の給料は支払われず生活は当然苦しくなります。そのための生活の保障として、健康保険は傷病手当金を支給してくれます。ただし、支給には基準があるので加入している健康保険組合のホームページで確認してみましょう。
産休中でも給料が支給される会社はありますが、もし支給がない場合はその間の生活が不安ですよね。女性は特にですが、共働き夫婦にも大打撃です。そんな家庭のために、出産手当金が支給されます。休職中に給料を受け取っていないことを条件に標準報酬日額の2/3にあたる額を、出産前42日~出産後56日までを上限に支給されます。その他にも入院時の食費やケガをした際の移送費などを保障してくれるものもあります。どれも申請をしないと支給されないので知らないと損をしてしまいます。親/自分の会社が加入している健康保険組合のホームページをチェックしましょう。
「健康保険だけでは不安なので何か民間の保険にも入っておきたい」、そう思う方もいらっしゃるかもしれませんね。そんなときは是非、会社が“団体保険"の制度を用意しているか確認してみてください。同じ保障内容でも、保険の加入を会社経由の団体扱いにすることで、個人で加入するよりも毎月の保険料をグッと抑えることができます。この制度があるかどうかはお勤めの会社によりますので要確認ですが、制度がある会社にお勤めの方は年に一回パンフレットが配られているはずです。もし覚えがなければ総務部に確認してみましょう。
結婚したときから亡くなったときまで、言葉通りあなたの慶弔に対して会社が払ってくれるお金のことです。その中でもまだまだ若いみなさんが見落としがちなのは、死亡に対する見舞金です。なかには、年収の3倍ほどを遺族に支払ってくれる会社があるほど手厚いものですが、金額は会社によりけりなので、死亡保険に加入するか迷ったときは是非、会社があなたの死に対していくらで弔ってくれるのか確認をしてみてください。
あなたが死亡したときに経済的に困る人がいるのかどうかで、準備の仕方は異なります。死亡保険に加入する際はきちんと見極めた上で加入を決めましょう。
これも会社によって異なりますが、あなたの働き方に合わせて休暇を取得できる制度がある場合があります。失恋休暇といったユニークなものから、一時間ごとに取得できる時間休制度など、働くあなたを守るための休暇制度を用意してくれている会社もあります。これらの福利厚生制度は就業規則に必ず書かれています。入社時に受け取るか、もしくはイントラネットに保存されているはずなので、この機会に一度確認してみましょう。
今回ご紹介した健康保険の保障制度と会社の福利厚生制度は、知らないだけで損をするのはもったいないものばかりです。しかしながら、これらの保障だけでは将来対策は完璧ではありません。人生にはあらゆるリスクが散らばっています。そのリスクに対してあなたは適切な対策を取っていかなければいけません。健康保険や会社の福利厚生制度に加えて、それは生命保険かもしれませんし、その他の金融商品かもしれません。どの対策が良いのかは、あなたのお金に対する価値観や経済状況にもよります。それをきちんと理解したうえで、自分らしい将来対策をとることをオススメします。
情報弱者になってしまい損をしないためにも、お金に詳しい先輩や上司に聞いたり、お金のプロであるファイナンシャルプランナーに相談したりするなど、まずは行動してみてはいかがでしょうか?
文●工藤将太郎(株式会社クレア・ライフ・パートナーズ代表取締役社長)
日本生命にて、外資系金融機関や、学校法人の福利厚生制度の構築に従事。「なぜ日本人は生命保険ばかりに偏るのか?」という疑問を持ち、生命保険に頼らない将来対策法を実践し独自のノウハウを確立、2011年に株式会社クレア・ライフ・ パートナーズを創業する。多くの人が思い描く将来を実現してほしいと考え、FPという立場から資産運用の必要性を発信している。
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