まんだらけに聞いた。手塚治虫も称賛、戦前・戦中に100冊刊行した伝説の出版社

更新:2018/11/01

社会人ライフ

下記の『ドウブツ学校』からは「ナカムラ繪叢書」になります。

No.71 ドウブツ學校
No.72 象さん豆日記
No.73 大陸合笑隊
No.74 海陸たんけん隊
No.75 坊やの密林征服
No.76 ほがらか親善便り

●1940年(昭和15年)刊行

No.77 まんが大陸日記
No.78 愉快な子熊
No.79 アフリカ探険
No.80 コドモ海洋丸
No.81 火星探険
No.82 南極のペンちゃん
No.83 小馬ひん助
No.84 まんが良?さま
No.85 まんが北極探険
No.86 火打箱
No.87 コドモ新聞社
No.88 ぼくらの燈臺

●1941年(昭和16年)刊行

No.89 愉快な鐡工所
No.90 野豚ものがたり
No.91 不思議な国印度の旅
No.92 仲よし日記帳
No.93 子供アジア號

●1942年(昭和17年)刊行

No.94 勇士イリヤ
No.95 五少年漂流記
No.96 繪物語 戰ふ勇太
No.97 雪國の兄弟

●1943年(昭和18年)刊行

No.98 繪物語 空の中隊
No.99 繪物語 小犬の從軍 
No.100 繪物語 富士の山

*......やむを得ず一部のタイトルで使われている旧字を常用漢字に修正しています。

■とても豪華な漫画本だった!

——「ナカムラ・マンガ・ライブラリー」「ナカムラ繪叢書」の特徴は、どのようなものでしょうか。

辻中取締役 まず、非常に力の入ったきれいな本だったことです。

・箱付き
・クロス加工
・B6ハードカバー

このような特徴を持つ「上製本」で、今からは考えれないくらい豪華な作りです。

——そうですね、今ではこういう漫画の単行本はないですよね。

辻中取締役 表紙のデザインもよくできていて、アール・デコ調といいますか、時代を感じさせるものになっていました。

——内容はどうだったのでしょうか?

辻中取締役 タイトルのラインナップを見ていただくとお分かりになるかもしれませんが、最初はドタバタしたギャグ的なものが多かったです。これが徐々に変わっていき、ナカムラ繪叢書になると、学習漫画のようなテイストの漫画が増えます。

——何か理由があったのでしょうか。

辻中取締役 おそらく当局(内務省など)から「このようなふざけた内容のものは時局にそぐわない」といった注文がついたのではないでしょうか。実際、当局が出版社を集めて、出版物の内容について議論を交わしたことがあります。

中村書店も1カ月に1冊といったペースで刊行していたのが、繪叢書になると刊行ペースが落ち、最後の年は3冊しか刊行できていません。当局の方針との兼ね合いがあったように思います。

——これらのタイトルの中には有名なものもあるのですか?

辻中取締役 最も有名なのは『火星探険』でしょう。これはSF漫画の先駆といえる作品です。手塚先生や松本零士先生が、その先見性、面白さを称賛されています。後になって、晶文社、名著刊行会、さらに小学館クリエイティブから復刊されたことでも有名です。

■大手出版社に対する挑戦だった!?

——「ナカムラ・マンガ・ライブラリー」「ナカムラ繪叢書」の意義をどのように考えるべきでしょうか。

辻中取締役 中村書店がこのシリーズを刊行したのは、おそらく講談社など大手出版社に対する一つの挑戦だったのではないでしょうか。大手のやらないことをやるという、ある意味マーケティング的な考えで作られたのかもしれません。

当時は、漫画の地位も今よりはずっと低く、小説などの文芸作品と比べれば一段下に見られていたと思います。ですから、今考えるよりもずっと大きな挑戦だったでしょう。

——なるほど。

辻中取締役 これらの作品を今読むと、後の手塚治虫先生をはじめとする戦後の漫画とは「陸続き」とは思えないかもしれません。それでも、その中から後の漫画家に影響を与える作品が生まれたのですから、「ナカムラ・マンガ・ライブラリー」「ナカムラ繪叢書」は、歴史的にも意味のある出版だったのではないでしょうか。

——ありがとうございました。

空襲などの戦災で、「ナカムラ・マンガ・ライブラリー」「ナカムラ繪叢書」はあまり現存していないそうです。特に60番台のタイトルは本当にレアだとか。日本の漫画史の貴重な1ページとして、未来に残していきたいものですね。

⇒『まんだらけ』の公式サイト
http://www.mandarake.co.jp/

「ナカムラ・マンガ・ライブラリー」「ナカムラ繪叢書」100冊リスト
出典:『まんだらけZENBU』Vol.43(まんだらけ発行)

(高橋モータース@dcp)

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