約8割が「将来に不安」。働く若者の行動傾向は?

更新:2016/01/28

社会人ライフ

約8割が「将来に不安」。働く若者の行動傾向は?

なかなか光が見えない不景気、日本の財政問題、大手企業の倒産など、先行きが見えづらい中で育ってきた現代の働く若者たちには、どのような心理傾向があるのでしょうか。



「これまで若手社会人を対象にさまざまなアンケート調査をしてきましたが、その背景に見え隠れするのが“不安”というキーワードです。今年の1月に会社員1,000名(20〜39歳)を対象に『ビジネスパーソンの朝活に関する調査(2011年1月20日)』を行いましたが、約8割が『将来に不安を感じる』と回答していたことからも、そのことが分かります」と語るのは、外資系コンサルティングファームを経て、現在ライフネット生命保険のマーケティング部長を務める傍らで、同社の人材採用も担当される松岡洋平さん。



この“不安”というキーワードを元に、働く若者たちの行動や思考に見られる傾向について伺いました。





【傾向1.大きなイベントに熱狂】

最近の若者に目立つ傾向の一つが、大きなイベント・お祭りを欲しているということ。特に大きなスポーツの大会に対して、若い世代全体が、これまでよりいっそう盛り上がるようになってきていると言います。



「若者の熱狂の根底には、“将来への不安”があると推察しています。サッカーのワールドカップのような国民的イベントには、目の前の仕事よりもこちらを優先しても許されそうな空気があります。そのため、一時的に大騒ぎをして熱中し、日ごろから抱えている漠然とした不安感から逃れたい、という心理が働くのではないでしょうか」(松岡さん)



確かに、大きなスポーツの試合には、日ごろの不安やうっぷんを一瞬で吹き飛ばしてしまう力があります。また、世界の強豪を相手に渡り合う日本の選手たちが、若者に希望を与えてくれるという面もあるのかもしれませんね。





【傾向2.強いリーダーを求めている】

次に目立つ傾向が、「実は強いリーダーを求めている」ということ。

最近の働く若者に、理想のリーダーのタイプを聞くと、自分たちを支え、導いてくれる“奉仕型のリーダー”がいいという回答が多いそうです。しかし、理想のリーダーとして具体的な人物名を聞くと、多数の票が集まるのは、オバマ大統領、小泉元首相や坂本龍馬など、グイグイと周囲を引っ張って行く“押しの強いリーダー”たち。むしろ奉仕型リーダーとは正反対のタイプです。



「若者たちの不安の根本にあるのは、将来が“分からない”ことですから、シンプルな言葉で、ブレがなく“分かりやすい”メッセージを発する彼らに自然に人気が集まるのでしょう。表面では奉仕型リーダーを支持していても、心の奥ではかなり力強いリーダー像を求めていると思います」(同)





【傾向3.ムダなことが嫌い】

買い物に関するアンケート調査を行ったときに、松岡さんの印象に残っているのが、若者の購買欲の少なさ。



「たとえば、車を持つことに興味がない若者が多いのですが、その理由として上がったのが、ムダだから、使うシーンがない、というもの。ムダという言葉が若者の思考を象徴しているように思えます」(同)



ちなみに、恋愛についても、「なるべくムダな交際はしたくない」という傾向が、特に男性に顕著に見られるそうです。“草食男子”という言葉も、こういった背景から生まれた言葉なのでしょうか。いずれにせよ、安心・安定を求める傾向から、ムダということにはかなり敏感になっているのかもしれません。



「実際、2009年3月に行った『婚活に関する調査』では、『結婚できないかもしれない』という不安がある人に不安の原因を尋ねると、『恋愛を面倒くさく感じている自分がいるから』という回答が34.8%にものぼりました。」(同)





【傾向4. 特定の仲の良い人といつも一緒に行動する】

若手社会人は、職場での飲み会や上司との付き合いについても「ムダ」と感じるのか、避ける傾向があるとも言われています。しかし、実際には同期の仲間など、職場の特定の人とはひんぱんに飲み会をするなど、深く付き合う傾向が読み取れると松岡さんは言います。



「昇給の望みが薄く、仕事そのものや出世に興味を持ちにくい中でも、上司や同期も含め、一部の親しい人との“サークル”のような結びつきに、安心感や楽しみを見出そうとしているのではないでしょうか。2010年の3月に行った、『2011年新卒者の就職活動に関する調査』でも、『上司や先輩、同僚とは深く付き合いたい』という新社会人は62.5%に上っていました」(同)





【不安を解消していくには?】

働く若者の心理傾向について探ってきましたが、先が見えない時代がもたらす不安感が、安心できる場を求めた行動に出ているようです。しかし、ここで述べた傾向はあくまで一時の不安解消で、人生を通した安心につながるものではありません。では、どうしていくとよいのでしょうか。



「上司などの年齢の離れた人や外国人など、世代や生きてきた環境の違う人とも積極的に付き合ってみると、視野が広がり、未知の世界への興味や知的好奇心が生まれてポジティブになれるのでは? さらに、客観的に見た自分の市場価値を知っておくのも大切だと思います。そうすることによって、自分がすべきことがハッキリと分かっていくはず」(同)。



多くの人と話して多様な生き方があることを知り、自分の良し悪しを認識して努力する気持ちが持てれば、進むべき道は自ずと見えてくるでしょう。経験とキャリアを重ねるうちに「この先自分の人生がどうなるか分からない」という漠然とした不安は少しずつ解消されていくのではないでしょうか。





松岡洋平氏プロフィール:

ライフネット生命保険株式会社マーケティング部長。新卒では外資系経営戦略コンサルティングファームに入社。コンテンツ・ベンチャーのプロデューサーを経て入社。「ビジネスパーソンの朝活に関する調査」、「2010 FIFAワールドカップとキャプテン翼に関する意識調査」など各種調査を行っている。

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